スペインワインの魅力
スペインを想像すると闘牛やフラメンコなど情熱の国と呼ばれる通り、熱いイメージがありますね。ワインも同じく情熱系が多い気がします。ワイン造りはイタリアと同じく概ね国内全域で造られています。ぶどう品種も約150種類の地ぶどうが栽培されています。またぶどうの栽培面積は世界第一位で、まさしくぶどう王国と言えるでしょう。
スペインは17の自治州の下に50の県があり、その自治州ごとに独立した文化が存在しています。その為魅力ある様々な料理やワインがあり、グルメにとっては見逃せない国だと言えます!
スペインワインの味わいの特徴
スペインの赤ワインの特徴は、強いタンニンとしっかりとした果実味にあります。他の国と比べ樽熟成を好む傾向にある為だと言えます。ワインの熟成によって以下のように呼称が分かれています。
- クリアンサ・・・赤は最低24カ月(うち樽熟成6カ月以上)、白は18カ月(同6か月以上)。
- レセルバ・・・赤は最低36カ月(うち樽熟成12カ月以上)、白は24カ月(同6か月以上)。
- グランレセルバ・・・赤は最低60カ月(うち樽熟成18カ月以上)、白は48カ月(同6か月以上)。
クリアンサでさえ、赤白とも6カ月の樽熟成が決められているので樽由来の香りやしっかりとした味わいになるのです。グランレセルバに至っては5年の熟成が義務付けられているので、口当たりが滑らかな力強いワインとなります。白ワインも同じく6ヶ月以上の樽熟成でしっかりとしたものもありますが、あまり多くはありません。どちらかと言うと果実味が豊かで軽快な白ワインが多く見受けられます。
スパークリングワイン カバ
スペインには有名なスパークリングワインの「カバ」があります。カタルーニャ地方で瓶内二次発酵(シャンパーニュ方式)で造られる本格的なスパークリングです。フランスに次いで世界第二位の販売量を誇り、世界中で愛されています。魅力は何といってもその安さにあり、安価なものでは1000円台からあり、瓶内二次発酵の製法としては非常にコストパフォーマンスに優れているのです。カバとはカタルーニャ語で「洞窟」を意味し、かつて醸造や保管を洞窟のような場所で造られていたという言われから来ています。
ぶどう品種は地ぶどうのチャレロ種やマカベオ種、シャルドネ種などが主に使われています。瓶詰めから澱引き、瓶内熟成が15カ月以上をレセルバ、30カ月以上をグランレセルバと呼び、2016年には36カ月以上の熟成品に対して「カバ デ パラヘ カリフィカード」という名称が新しく創設されました。ちなみにスパークリングワイン全体をスペインでは、「エスプモーソ」と呼びます。スパークリングワインについての製造法等については別記事「シャンパンとスパークリングワインの違い」をご参照ください。
シェリー酒について
スペインで欠かせないのがシェリー酒です。シェリー酒というと他のお酒だと思いがちですが、シェリー酒は酒精強化ワインという分類に入ります。アンダルシア地方で造られており、辛口から極甘口まで様々です。ヘレスという場所が発祥とされ、シェリー酒の事をスペインでは「ヘレス」または「ピノデヘレス」と呼ばれています。
製造方法は特殊で、2か月間の発酵後にブランデーを添加して15~17%までアルコール度数を高め、樽熟成します。発酵過程の方法の違いにより、フィノという辛口タイプからペドロヒメネスという極甘口まで様々なシェリー酒が存在します。シェリー(ヘレス)は原産地呼称が守られているため、他の地域や国で同じ製法で造ってもシェリーと名乗ることは出来ません。
スペインワインのぶどう品種と主な産地
黒ぶどうの主な品種
- テンプラニーリョ・・・スペインを代表する赤ワインの品種で早熟と言う意味のぶどうです。長期熟成に適してる為、上等な赤ワインに使われます。
- ガルナッチャ・・・天候の悪さや病気などに強く生育が良いとされます。南仏などではグルナッシュと呼ばれ、赤ワインの品種としては世界最大の栽培面積となっています。
- マスエロ・・・・別名カリニャンと呼ばれ世界中で栽培されているスペイン原産種です。色味は濃く酸味も高いのが特徴です。
白ぶどうの主な品種
- アイレン・・・スペインで一番栽培面積が多いぶどう品種です。カスティーリャ・ラ・マンチャ地方にて蒸留酒によく使われています。
- マカベオ・・・豊かな香りと苦味をもっており、別名ビウラと呼ばれています。スパークリングのカバの主要品種。
- ベルデホ・・・ルエダ地区で主に栽培されており、香りが豊かでフレッシュな酸味が特徴です。
- アルバリーニョ・・・リアスバイシャスで主に栽培されている爽やかで酸味が豊富なぶどう品種で、高級な白ワインに多く使われています。
主な産地と特徴
リオハ | スペイン北部のエブロ川流域に位置しています。生産の90%以上が赤ワインで、どっしりとした貫禄を持つものが多くあります。1991年にスペインで初めて特選原産地呼称リオハDOCaが認められました。 |
ルエダ | ドゥエロ川流域にある産地で白ワインが主に造られています。白ワインのヴェルデホがDO(原産地呼称)として認められています。 |
カタルーニャ | スペインの東に位置しバルセロナを州都に持つ地域です。地中海に面し温暖な気候で、カバの産地として有名です。 |
カスティーリャラマンチャ | ぶどうの栽培面積が世界最大の産地で、多くは白ぶどうのアイレン種。ここではテンプラニーリョ種をセンシベルと呼びます。8つのDOを持つ地域。 |
アンダルシア | 酒精強化ワインのシェリーが多く造られています。シェリーはここヘレスが発祥の地。 |
プリオラート | 2009年にリオハと同じくDOCaに認定されました。高級ワインを多く産出しています。カリニャン・グルナッシュで新しいスタイルのワイン造りが行われています。 |
リベラデルドゥエロ | テンプラニーリョ種(ここではティントフィノという)が中心でリオハと並び高級ワインの産地として有名。著名なスペインワイン「ベガシシリア」などを生む。 |
リアスバイシャス | 大西洋に面する海岸線に沿った地域で栽培の96%が白ぶどうのアルバリーニョ種。発泡性白ワインの「ヴィーニョヴェルデ」の産地。 |
スペインのワイン法とラベル
1970年にフランスのワイン法にならい、原産地呼称(D.O)を名乗る為の原産地呼称制度が定められました。
イタリアワインではDOCG/DOC(スペインワインに相当するD.O.P)はキャップシール周りにシールが貼られており分かりやすくなっていますが(詳しくはイタリアのワイン参照)残念ながらスペインワインでは下記のランクが表ラベルに表記されていないものが多くあります。バックラベルに小さく表記されているものが多いので、下記の文字を探さなければなりません。
現在日本では、極端に安価なスペインワイン以外ではD.Oのランクのワインが多く見受けられます。
D.O.P(Denominacion de Origin Protegida)保護原産地呼称ワイン
- V.P.(Vino de Page)・・・ヴィノ デ パゴ/単一ぶどう畑限定高級ワイン
- D.O.C(Denominacion de Origen Calificada)・・・デノミナシオン デ オリヘン カリフィカーダ/特選原産地呼称ワイン
- D.O.(Denominacion de Origen)・・・デノミナシオン デ オリヘン/原産地呼称ワイン
- V.C.I.G.(Vino de Calidada con Indicacion Geografica)・・ヴィノ デ カリダ コン インディカシオン ヘオグラフィカ/地域名称付ワイン
I.G.P.(Indicacion Geografica Protegida) 保護地理的表示ワイン
- Vino de la Tierra・・・ヴィノ デ ラ ティエラ/地方ワイン
- Vinedos de Espana・・・ヴィニェードスデエスパーニャ/スペインワイン
ハズさない おすすめ赤ワイン 10選
ガルシアーノ D.O 1800円前後
ナバーラ地方のワインで地ぶどうのガルナッチャ70%グラシアーノ30%。果実味の中に端正な酸が光るとてもいきいきとした赤で、繊細なタンニンに程良いボディが心地よく飲みやすい。
ベラ ロブレ D.O 2300円前後
ベラはスペイン語で美しい(女性)という意味です。豊潤でまろやかな味わいのワインの印象と重なります。リベラデルドゥエロの好立地に位置するワイナリーで、ベラの特徴の果実味溢れるエレガントなスタイルです。ティンタデルパイス(テンプラニリョ)種から造られ、アメリカンオークとフレンチオーク樽を使い分け熟成6カ月後瓶内熟成6か月。オーク樽由来の甘いスパイスの香りと旨味を伴ったタンニンと果実感が感じられます。またミネラルが繊細でエレガントなアフターを持ちます。SAKURAワインアワード2019でゴールド、ジェームスサックリング92ポイントと高い評価を得ています。
クネ レセルバ D.O.C.a 2800円前後
クネはスペイン最高の生産者として有名です。「WINE SPECTATOR TOP 100WINES」に選出され、その中で初めてスペインワインとしてNo.1に輝きスペイン王室にも認められた高い評価を世界から得ています。輝きと深みのあるルビー色をしておりラズベリーなどの赤い果実を想わせる深いアロマが広がります。オーク樽由来のスパイスとかすかにバルサミコの香り、バランスの良いタンニンを持ち複雑で洗練された味わいと長い余韻が特徴です。SAKURAワインアワード2019でダブルゴールド、ワインスペクテイター90ポイント。
トーレス アルトスイベリコス レセルバ D.O.C.a 3000円前後
ペネデスの名門トーレスがリオハで造る凝縮感とスパイシーさを感じるワインです。アルトスイベリコスと言う名はワイナリーが位置するイベリア半島の文化を多角的捉えようとした証。長期熟成を経たことによる複雑味と調和が取れた味わいで、上品な余韻が長く続きます。アルトス・イベリコス・クリアンサの凝縮した果実味が全面に出たスタイルと比較すると、エレガントとも表現できるほどの上質な風味を感じ取ることが出来るでしょう。
セレニータ ニット D.O 3000円前後
美しい月のエチケットに魅了されます。ラベルがキレイだとなんだかそれだけで許してしまいそう(何を?)ですが素晴らしいワインです。カタルーニャ地方モンサンにあるワイナリーで、2007年に創立されたまだ若めではありますがモンサンのテロワールに惚れ込んだダニサンチェス氏は有機栽培を得意としてワインを造り上げています。ガルナッチャ70%サムソ30%で力強く凝縮感がありながら、繊細で女性的なワインです。何だかラベルを見てもその雰囲気が分かりるような気がします。野いちご、さくらんぼ、果物のコンポートを想わせる味わいに仕上がっています。
サルモス D.O.C.a 4000円前後
トーレスがちょいと本気を出して造ったのがこのサルモスです。カタルーニャにあるプリオラートという地はスペインで特選原産地呼称認定された2つのうちの一つです。他はあのリオハ。カタルーニャといえばバルセロナ、バルセロナといえばガウディやサッカーですね。食事も気候もワインも美味しい!この畑は急斜面が続く丘陵地帯にあり土壌はリコレリャという粘土岩。石、雲母、鉄など様々な鉱物がゴロゴロしているってことは、ぶどうの根が地中にどんどん伸びて独特のミネラルと力強さを持ったぶどうが出来上がる。フレンチオーク16カ月、「力強さとエレガンスの比類なきバランス、濃厚な果実味を湛えた滑らかで芳醇な味わい」とは、輸入元エノテカさんがこのワインに付けたキャッチフレーズ!
マルティン センドージャ レセルバ D.O.C.a 4000円前後
樹齢100年以上の古木から果実味と凝縮感を大切に造られた現代的なリオハのワインです。テンプラニーニョ80%グラシアーノ20%。樽香と果実味がバランスよく調和しており、肉付気も良く複雑な余韻が長く続き、深い味わいが魅力です。
クワトロキロス 4700円前後
ちょっとぶっ飛びワインをご紹介します。スペインのマジョルカ島のクワトロキロスです。マジョルカ島のワインというのは聞いたことがありませんでしたし試飲もしていませんが、何だか面白そうです。そもそもの醸造家グリマルト氏と音楽家カバジェロ氏の二人で立ち上げたプロジェクト。プロジェクトとは何ぞや分かりませんが、2009年初リリースのようでもう10年以上の実績があるようです。ワインはいたって真面目なものです。地ぶどうカイエット種100%、フレンチオーク樽熟成14カ月。ブラックベリー、チェリー、アプリコット等の新鮮なフルーツとスパイスや香り豊かなハーブ、わずかにスモークした香りも印象的。軽やかでなめらかな口当たりが心地よい。ビオロジック ワインアドヴォケイト92。伝統だけがイイんじゃない!
コンティノ レセルバ D.O.C.a 4900円前後
特選原産地呼称リオハのレセルバです。リオハのワインはテンプラニーリョが主ですが、このコンティノはグラシアーノの単一畑を持っています。テンプラニーリョにやや欠けるアロマとエレガントさを補っているせいでしょうか、パーカーポイント94、ワインスペクテーター90、最近ではSAKURAワインアワードのゴールドなど、コンテストには抜群に強いワインです。グラシアーノ由来のチョコレートやユーカリなどのニュアンスと赤い果実味の鮮烈な香り、ボリューム感あふれる赤で、樽熟成24カ月瓶熟成24カ月。ユーカリのニュアンスって何だろう?
インペリアル グランレセルバ D.O.C.a 7000円前後
スペインワインの歴史を変えたと言われるワインです。専門誌ワインスペクテイター2013で何とNo.1に輝きました。フレンチオークで発酵しその後アメリカンとフレンチオーク樽で24カ月熟成、その後瓶内で36カ月。クネ社のフラッグシップワインと同時にリオハのクラシックスタイルの代表的存在の重厚感あるボディの逸品です。パーカーポイント95他高評価多数。
スペイン料理
スペインの料理を思い浮かべると真っ先に、パエリア・チョリソ・生ハムなどが浮かびます。スペインのバル(立ち飲み居酒屋)ではピンチョスという小皿に様々な美味しそうなおつまみが並びわくわくするような楽しさがあります。夜に友人たちとバルをはしごするのが恒例のようで、気軽にワインも飲まれています。特に生ハムはハモンセラーノといって、大きなハムの塊を薄くスライスしながら頂くスタイルは迫力があります。イタリアのプロシュート、中国の金華ハムと並び世界三大ハムとして有名です。
料理全般は少し濃いめの味が多く見られ、樽熟成されたスペインの赤ワインにピッタリです。また魚介を使った料理も多く、パエリアなどはカバや穏やかな酸味を持つ白ワインが良くマッチします。
まとめ
スペインのカタルーニャ地方が独立を望んでいるように、自治州の主張が強く自らの土地への愛情が深淵な分、料理へのこだわり、ワインへのこだわりが強いのはイタリアと似ています。日本でもバル系の飲食が一般的になりパエリヤやピンチョスなど珍しいものでは無くなっています。スペインワインは総じてコストパフォーマンスに優れており、5000円を超えるワインは逆になかなか見つかりません。地ぶどう愛が強いスペインですが、イタリア同様国際品種を使った優秀なワインも出始めています。ご紹介出来ませんでしたが1500円以下のワインでは間違いなくお隣のフランスワインよりも「買い!」です。