イタリアは美食の国であり、日本ではイタリア料理がとても人気を博しています。今や当たり前のようにパスタやピザなど無くてはならない存在です。かねてからイタリアのワインも日本で多く飲まれていましたが、イタリアの食材の輸入が増えるとともに、日本に輸入されるイタリアワインの種類も増えてきています。ここではイタリアワインの魅力や特徴、おすすめの赤ワインをご紹介します。
イタリアワインの魅力
イタリアワインの魅力は何といってもその地のぶどうを使って造られる個性あるワインが豊富であることです。日本と同様南北に長い地形をしており、そのほとんどが温暖な地中海性気候の恩恵を受けています。それにより世界一ワイン造りに適した国と称され、イタリアの20州全てでワイン造りがさかんに行われています。事実ワインの生産量は世界で第一位!!
生産するワインは赤ワインが主で、白ワインはそれ程多くはありません。北のヴェネト州やヴェネツィア・フリウリ・ジューリア州では多くの良質な白ワインが造られていますが、スーパースター級の赤ワインが世界で認めれているため、少し存在が薄くなっているようです。
イタリアワインの味わいと特徴
イタリアの土着のぶどうは500種類を超えると言われています。その多くの品種を使い全土でワイン造りが行われおり、ワインの味わいは物凄いバリエーションになります。地に根付いたワインは様々な顔を持ち、一言では言い表せない生活の一部になっています。古代ギリシャ文明を経て古代ローマ文明の中心にあった現在のイタリアは、交易が盛んに行われてフランスよりはるかにワインの文化が定着したとされています。
フランスワインと比較して一言で表現するのなら、親しみやすい味わいでしょうか。洗練された上品な・・というよりもどこか懐かしく落ち着きのある雰囲気を持っています。フランスのボルドーやブルゴーニュよりも温暖な気候である分、ぶどうの完熟度の差もあるのかも知れません。またその地で安価で美味しいワインが数多くあるのも魅力の一つです。
イタリアワインの主な産地とぶどう品種
イタリア全土にワイン造りがされていますが、中でも代表的な銘醸地とワイン、またそのぶどう品種をご紹介します。
ピエモンテ州
ピエモンテ州はイタリアの西北に位置しています。フランスとスイスの国境に面しており、緯度はフランスのボルドーと同程度になります。偉大なワインからスパークリングワインまで様々なワインがと売られています。
- バローロ・・・イタリアワインの王と称され、重厚でしっかりとしたタンニンがあります。ぶどう品種はネッビオーロ種。
- バルバレスコ・・・イタリアワインの女王と称され、このワインも濃厚ですがタンニンはやや優しめが多い。
- バルベーラ ダルバ・・・ぶどう品種はバルベーラ種。ネッビオーロ種と比べてやや穏やかな味わい。
- モスカートダスティ・・・白ぶどうのモスカート種を使った甘口の白ワイン。
ヴェネト州
ヴェネト州は水の都ヴェネツィアがあるところで、ピエモンテと同程度の緯度にあります。爽やかな白ワインや濃厚なアマローネが有名です。またぶどうの搾りカスで造るグラッパという蒸留酒も盛んに造られている地域です。
- アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ・・・陰干ししたコルヴィーナ種などを使って造る凝縮した味わいの赤ワイン。
- ソアーヴェ・・・ガルガネーガ種などを使って造る辛口白ワイン。
「アマローネデッラヴァルポリチェッラ」については別記事「アマローネ おすすめランキング!魅力や味わいもご紹介」をご覧下さい!
ロンバルディア州
ロンバルディア州はピエモンテ州の右に位置しており、州都はミラノです。幅広くワイン造りがされていますが、イタリアの最高級のスパークリングワインのフランチャコルタが有名です。
- フランチャコルタ・・・主にシャルドネ種を使ったスパークリングワインです。シャンパーニュ製法で造られるレベルの高い繊細なワインです。詳しくは別記事「フランチャコルタ」をご覧ください。
トスカーナ州
トスカーナ州は西側が全て地中海に面している穏やかな気候で、州都はフィレンツェです。ここも世界的に有名なイタリアワインが多く造られており、世界中にトスカーナワインのファンがおります。ボルゲリという海に面したところでは、地のぶどうではなく国際品種のカベルネーソーヴィニヨンやメルロー種を使ってスーパータスカンと呼ばれるワインも注目を浴びています。
- キアンティ・・・サンジョヴェーゼ種を使った世界的に有名はワインで、軽いタイプから重いタイプまで様々です。
- ブルネッロ ディ モンタルチーノ・・・これもサンジョヴェーゼ種を使い完熟した濃厚な果実味を持つ赤ワインです。
アブルッツオ州
アブルッツオ州はイタリアの真ん中の東に位置しており、アドリア海に面しています。温暖な気候で安価なワインからしっかりとしたワインまで様々なワインが産出されています。
- モンテプルチアーノ ダブルッツオ・・・モンテプルチアーノ種を使った凝縮した果実味とこなれたタンニンを持つ赤。
プーリア州
プーリア州はイタリアをブーツの形に例えた時のかかとの部分です。カラブリア州と同じく昔にアフリカとの交易が盛んに行われていたところで、地元料理も香辛料を使ったものが多く、それに負けないしっかりと完熟したぶどうを使ったワインが多く造られます。
- プリミティーヴォ・・・ワイン名と同じプリミティーヴォ種を使った完熟した果実やプルーンを想わせる芳醇な赤ワインです。
イタリアワインの選び方はこれ!
ずばりDOCGとDOCのシールを目印にしましょう。イタリアワインはその種類の多さと長い名前で覚えるのはとても大変です。イタリアでは原産地呼称を守るために、イタリアワインに原産地呼称のランクを付けています。その地のワインを名乗る為に、決められたぶどう品種から製造方法まで細かな決まり事を作り、本当のイタリア固有のワインを保護しています。(詳しくは「一目で解るイタリアワインの格付けピラミッド」を参照してください)
その中で最高ランクのDOCGと次のランクDOCのワインには、ワインの首まわりにそれを示すラベル紙が巻かれています。現在はDOPという名に統合されましたが、現在でも旧の呼び名が使えるので今でもDOCG,DOCはそのラベルは変わりません。美味しさのランクではありませんが、わかりやすい目安となります。
DOCGの銘柄は76種類、DOCの銘柄は330種類あり毎年DOCがDOCGへ昇格したりして数は変わりますが、膨大な数のワインが存在します。ラベルには一本一本ナンバーがついており、品質保証の証と言えるでしょう。
国際品種(主にフランス)のカベルネソーヴィニヨンなどを使ったワインはどDOCには一部(ボルゲリ、シチーリアなど)認定されていますが、あまり多くはありません。あくまでも「イタリアの○○産です」と呼称するのは、その地で古くから使われているぶどうに限られます。つまり、このシールが付いているものは、真のイタリアの味わいを持つワインであると言ってよいでしょう。
おすすめのイタリア赤ワイン 10選
予算3000円編
バルバレスコ マーニョ サンシルヴェストロ DOCG
ピエモンテ州のバルバレスコです。バローロと双璧をなすワインでとても有名です。ネッビオーロ種100%で造られる骨格がしかりしており、しっかりとしたタンニンを感じます。ホワイトペッパーのアクセントや熟したいちごの甘い香りが特徴のフルボディです。オーク樽熟成で9カ月、瓶熟成6カ月と長く、伝統的なワイン造りを150年に渡り守って来ている造り手です。バローロと比較してこちらは繊細さと優雅さを兼ね備えている上品さが受けています。おすすめのポイントは価格です!バルバレスコは概ね4000円台後半が多いので3000円を切る価格は魅力です。
キアンティルフィナ ヴィッラディヴェトリーチェ リゼルヴァ DOCG
トスカーナを代表するワインで親しみ安いワインで聞いたことがあるワインだと思います。このリゼルヴァはキアンティの中でもルフィナ地区産でオーク樽60カ月という長い熟成を経て世に出てきます。実は私は以前、現5代目当主ジャンフランコ氏の前の4代目グラートグラーティ氏の時に訪問し、家族の暖かくて優しい出迎えに感動した覚えがあります。家族経営で規模を大きくもせず、丁寧に造り上げている姿勢に感動しました。ぶどう畑の他、オリーブの木が壮大に広がっている様は何とも美しい田園風景です。「トスカーナの休日」や「トスカーナの幸せレシピ」などこの地を題材にした映画も、この地ならではの魅力があってこそなのでしょう。
ルイジ エイナウディ ドリアーニ DOCG
ピエモンテ州のワインです。創始者は第二次大戦後初めて民主選挙で選ばれて大統領になったルイジエイナウディです。ピエモンテの伝統品種であるドルチェット種はアントシアニンが豊富で、熟成のポテンシャルは高く柔らかいタンニンの心地よい仕上がりです。骨格もしっかりとしており、エレガントな味わいが人気です。
ロッソディモンタルチーノ マルティノッツィ DOC
トスカーナ州の赤ワインです。モンタルチーノ地区で最も古い生産者の1つであるマルティノッツィ社産。サンジョヴェーゼ種100%でオーク樽10か月と瓶熟成3カ月。骨格のしっかりとした深い果実味と上品なタンニンが素晴らしい。完熟いちごやブラックベリーの果実香があり滑らかな舌触りです。この上位のワインでブルネッロディモンタルチーノがあります。
モンテファルコ サグランティーノ DOCG
ウンブリア州の赤ワインです。サグランティーノ種100%。エッジにガーネット、熟れた果実の風味とココアやバニラ、シナモンなどのスパイス香がとても複雑にからみあいます。品種の特徴である力強さとこなれたタンニンの絶妙なバランスと長い余韻が特徴です。
予算5000円編
エドニス リゼルヴァ DOC
シチーリア島の赤ワインです。シチーリアは恵まれた気候と土壌で豊かなぶどうが栽培されます。その地のネロダーヴォラ種100%を使った濃厚でリッチな果実味を持ち、タンニンは熟していて滑らかです。非常に深い色調をしており、熟したプラムや赤果実のコンポート、たばこやバニラなどの複雑で深い香りが特徴です。
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ DOCG
ヴェネト州の代表的な赤ワインです。アマローネはアパッシメントというイタリアの伝統製法から造られます。風通しの良い部屋でぶどうを陰干しして不要な水分を飛ばし糖度を高めワイン造りに入ります。大変手間が掛かりますが濃厚なものに仕上がります。IWC2018で最優秀アマローネに選ばれ、世界が注目したワインです。アマローネはもっと高額なものが数多く存在しますが、この価格なら手が届きそうです。スパイスでコンフィしたワイルドベリーなどの凝縮した果実の香り、果実味がしっかりと感じられるフルボディだが、タンニンや酸味にまとまりがあります。濃厚でありながらエレガントさも感じるバランスの良いワインです。
バルベーラダルバ ブルーノジャコーザ DOC
ピエモンテ州の有名な赤ワイン。ブルーノジャコーザはガヤと双璧をなすバルバレスコの生産者です。ここのバローロは「バローロのロマネコンティ」と称されるほど。バルベーラ種100%で造られており、完熟したカシスやはちきれそうなチェリーの果実香、チョコレートやコーヒーのニュアンスがあります。タンニンは細かく滑らかで、旨味たっぷりの果実の風味と酸とのバランスが素晴らしい逸品です。
バローロ ニコレッロ DOCG
ピエモンテ州を代表する赤ワインで「イタリアワインの王」と称されるネッビオーロ種100%で造られます。このニコレッロは比較的安価で初心者にもおすすめです。ぶどうの凝縮感が高く、完熟したチェリーと果実のアロマ。深みのあるガーネット色にオレンジがかったエッジ。非常に均整のとれたボディにこなれたタンニン。いきいきとした果実味が心地よく余韻も長く続きます。
タウラージ ラディーチ DOCG
カンパーニャ州を代表する赤ワインです。頑なに地ぶどうにこだわり続ける名門マストロベラルディーノ産。アリアニコ種100%、スパイスやコーヒー、ブルーベリーやチェリーなどの果実のアロマがとても豊かなです。しっとりと滑らかな舌触りと豊かなタンニンはキメ細かく、明るいいきいきとした酸と果実味のバランスがとても良いワインです。
イタリアワインとイタリア料理
料理とワインのマリアージュ(結婚=相性)のセオリーのひとつに「その地方の料理とその地方のワイン」があります。歴史の中で食文化が育まれ、料理にマッチしたワイン、或いはワインにマッチした料理があるのは人の食欲が欲する当たり前の感覚だと思います。以下、代表的な地方料理とその地方のマッチするワインを表にしました。
他には、料理の持つ食感や香り、味わいの濃さによってワイン選びをするとその食事は充実したものになるでしょう。例えばこってりとした脂分の多い料理には、その油脂を中和してくれるタンニンの多いワインが合います。レモンや塩をかけて頂く料理や軽めの魚料理には、白ワインの酸味が生臭さを消してくれるなどです。
イタリアが美食の国と称されるのは南北に広がる地形から様々な食材が手に入る事と、イタリア人の食へのこだわりだと思います。これに20州全てでワイン造りがされていれば、料理とワインの相性の掛け合わせは無限に広がります。
おわりに
イタリアは歴史的な背景による独特の文化と、恵まれた気候によって卓越した食文化が栄えました。食通と称されるイタリア人はワインのこだわりも強く、まさしく百花繚乱の味わいで世界を魅了し続けています。ここで紹介した地ぶどうで造るワインの他、世界各国のぶどう品種のワイン造りも盛んに行われています。これからもイタリアワインの暴走に目が離せません!