シャンパン(シャンパーニュ)は造り上げるのにとても手間がかかります。通常のスパークリングワインと違い、瓶内二次発酵という作業や澱引きなど細かく複雑な工程を経て、美しく美味しいシャンパンが生まれて来るのです。シャンパンの作り方を分かりやすく説明します。
シャンパンの製造工程
毎年9月から10月にかけてぶどうを手摘みで収穫します。シャンパーニュではぶどうの格付けがあり村単位で決められています。詳しくはシャンパーニュの格付けとはをご覧ください。
大きなプレス機でゆっくり圧搾します。4000kgのぶどうから約2000Lのぶどうジュース(キュヴェ=一番搾り)になります。二番搾り(プルミエタイユ)までがシャンパン用となります。
ぶどうの品種ごとに木樽かステンレスタンクに入れて約10週間発酵させ、白ワインになります。この時糖分はアルコールになりほぼありません。これをリザーブワインと言います。
年代毎、品種毎、畑毎の異なるリザーブワインをブレンドしていきます。ここが一番腕の見せ所で安定した味わいになります。ヴィンテージものでは異なった年代のものはブレンドしません。
ワインに蔗糖(スクロース)などの糖分を加えて瓶詰めします。
酵母が糖を分解しアルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)を生み出します。ここで澱が貯まって来ます。2カ月間ゆっくりさせることにより、炭酸ガスは液体に閉じ込められます。この瓶内二次発酵をシャンパーニュ方式とも言います。詳しくはシャンパンとスパークリングワインの違いをご覧ください。
澱と一緒に寝かせることで澱からアミノ酸(旨味成分)がワインに戻ります。ティラージュ後最低15カ月、ヴィンテージものは3年寝かせるのが決められています。
ピュピトルという穴の開いた板に立て4週間から6週間の間、1日1/8回転させゆっくり澱を瓶の口に集める。昔は手作業でしていたが現在はジャイロパレットなどを使っています。
澱の溜まった瓶の口をマイナス20度の水に付け、澱が凍ったら栓を抜き澱を取り除きます。
澱を除いた分リキュールを加え味わいを調整する。この糖度の量により甘辛の度合いが決まる。リキュールとはリザーブワインに糖分を加えたもので、門出(出荷)のリキュールと呼ばれます。
コルクを打ち、針金の蓋(ミュズレ)をしてラベルを貼って出来上がり。
シャンパンの味わいの表記
ドサージュによる甘辛表記の分類は以下の通りです。わかりやすくラベルに記載されています。
表記 | 味わい | 糖分の添加量1リットル当当たり |
---|---|---|
エクストラブリュット EXTRA BRUT | 上辛口 | 6g以下 |
ブリュット BRUT | 辛口 | 12g以下 |
エクストラドライ EXTRA DRY | 中辛口 | 12~17g |
セック SEC | 中甘口 | 17~32g |
ドゥミセック DEMI SEC | やや甘口 | 32g~50g |
ドゥー DOUX | 甘口 | 50g以上 |
その他3g以下をブリュットナチュール・パドゼ・ドサージュゼロなどの呼び方があります。ヴーヴクリコのリッチ(ドサージュ60g)モエエシャンドンのアイスアンペリアル(ドサージュ45g)など甘口で氷を入れて楽しむシャンパンも近年流行しています。
RM(レコルタンマニピュラン)とは
シャンパンの多くはモエエシャンドンやヴーヴクリコなど大手メーカー(メゾンという)が有名ですが、その生産量の多さからすべてが自社畑で造られるぶどうで賄われてるわけではありません。シャンパーニュでは製造設備を持たないぶどうの栽培業者も多くおり、大手メゾンにぶどうを供給しています。このような形態をNM (ネゴシアンマニピュラン)といいます。
また自社畑で造るぶどうのみを使いシャンパンを造るボルドーの有名シャトーのようなメゾンもあります。これをRM(レコルタン・マニピュラン)といいます。独自のオリジナリティーあるシャンパン造りが出来、近年注目されつつあります。大手と違い生産量は非常に少ないのであまり目立ちませんが、日本でも少しづつ話題となっています。
このように生産者業態別の識別の為、ラベルに小さく2文字が記載されています。見慣れないシャンパンを手に取りじっとラベルを眺めている方がいれば、RMの文字を探しているのかも知れません!
識別記号 | 呼称 | 意味 |
---|---|---|
NM | ネゴシアン・マニピュラン | 自社畑以外でぶどうの栽培者や小規模生産者からぶどうやワインを買い付けシャンパンを造り販売。大手メゾンがこれにあたる。 |
RM | レコルタン・マニピュラン | 自社畑で造るぶどうのみを使いシャンパン造りをするメゾン。自社のぶどうの特性を生かしたシャンパン造りが出来る。小規模業者が多い。 |
CM | コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン | ぶどう栽培の共同組合のぶどうを使い共同組合のブランド名で造るシャンパン。 |
RC | レコルタン・ココーペラトゥール | ぶどう栽培者が共同組合の設備を利用し、自社ブランドで販売するシャンパーニュ。 |
SR | ソシエテ・ド・レレコルタン | 同族やグループのレコルタン業者が共同で造るシャンパーニュ。 |
MA | マルク・ダシュトール | レストランや大手スーパーなどのオリジナルブランド用に造るシャンパン。 |
おすすめのシャンパン 5選
セルジュ マチュー RM
オーブ最高の造り手にして、シャンパーニュの全生産者の中でも最も高く評価されているレコルタンマニピュランのひとつです。フランスのガストロノミー界で絶大な人気を博しており、3つ星「アルページュ」の天才シェフ、アラン・パッサール、同じくパリの名店「アピシウス」のジャン・ピエール・ヴィガト、ランスの名門「ボワイエ・レ・クレイエール」のジェラール・ボワイエといったフランスを代表するグランシェフ達が惜しみない賞賛の声を送っています。ピノノワール100%。
ジャニソンバラドン ヴァンドヴィル RM
アシェットガイド・ゴーミヨ・ワイナートなどの専門誌で常に高い評価を得ているレコルタンのシャンパン。ピノ・ノワール50%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%。平均樹齢35~40年。2~3年間ビン熟成。ヴァン・ド・レゼルヴの約10%はブルゴーニュ製樽で半年間熟成。ドザージュは約8g/l。品名はオーナーの祖母の名前Violette Vendevilleから。ハートのラベルが何ともアイコニックで可愛らしい。
ボーモンデクレイエール グランドレゼルヴ CM
1955年設立の生産者協同組合のブランド、約80haの畑を240名の栽培家が担当。それぞれの畑は1haにも満たない為、限りなく手間をかけた栽培が可能。クールキュヴェと呼ばれる最高純度の第一搾汁を使う事にこだわり、長期熟成に耐える洗練されたスタイルのシャンパン。フルーティでまろやかな優雅さが際立つ、きめ細かな泡立ちで熟した果実のアロマと柑橘系のフレッシュな風味が心地よく後味はすっきりとしています。
ヴーヴクリコ リッチ NM
1772年に創業したヴーヴ・クリコ・ポンサルダンのリッチです。遊び心に溢れた飲み方を愉しむために生まれた甘口シャンパーニュ。ピノ・ノワールでヴーヴ・クリコのスタイルを表現し、ピノ・ムニエがまろやかさをプラス。シャルドネが新鮮な味わいとシルクのような舌触りを演出しています。特別なドサージュ(60g/L)でブレンドされた1本には、氷やフルーツを加えてアレンジすることで、より一層フレッシュで様々なシチュエーションに映える一本です。
ボランジェ スペシャルキュヴェ NM
ボランジェは1829年創立の名門シャンパーニュ・メゾンです。生産に必要なブドウの約70%を、シャンパーニュ造りに最良とされるグラン・クリュとプルミエ・クリュで主に構成される約160haの自社ブドウ畑から供給しています。ボディー、バランス、深み、フィネスを持ち、独特なアッサンブラージュを毎年再現したボランジェの最もピュアなスタイル。コルク栓をしたマグナムボトルで5〜10年間熟成させたリザーヴワインを用い、セラーで最低3年間かけて熟成させた、常に変わらぬ高い品質のマルチ・ヴィンテージシャンパーニュです。
おわりに
シャンパーニュ地方はかつてぶどう産地のほぼ北限とされ、冷涼なところであった為、糖度が低く酸味が強いワインしか出来ませんでした。その酸味があったからこそシャンパンという宝石のように美しく、世界を魅了する液体が生まれたのです。何百年に渡り受け継がれてきたシャンパーニュの特別な製法に感謝です。ちなみにシャンパンを注いでグラスの下から上がる泡をペルル(真珠)、グラスのふちに連なる泡粒をコリエ ド ペルル(真珠の首飾り)と呼びます、とてもお洒落な呼び方ですね!