1990年から30年間で日本のワインの消費量は3倍以上になりました。最近のデータでは成人一人当たりの年間消費量は4.2本です。1989年に酒税法改定で輸入ワインの価格が安くなり、1995年に田崎真也氏(現日本ソムリエ協会会長)が世界ソムリエコンクールで世界一に輝くなどの出来事で、今や身近なお酒として楽しまれています。ちなみに年間消費量一番の国はポルトガルで82本で二番はフランスの66本だそうです。
ワインとは・・
お酒はそもそも日本ではアルコール度数1%以上の飲み物を言います。お酒は蒸留酒と醸造酒に分類されています。。蒸留酒とは、ウイスキーや焼酎・ウォッカ・ジンなど醸造したお酒を蒸留したお酒で、醸造酒より総じてアルコールは高めのお酒です。醸造酒とは、ビール・清酒・ワインなどがあります。ワインは醸造酒でぶどうを原料としたもので、ワインボトルの裏ラベルに品目「果実酒」と書かれています。「甘味果実酒」とあればぶどうの他、糖類や他の原料が入っているものになります。お酒は醸造過程や仕上げなどにお水(割水、加水)を使います。しかしワインは水を一切使いません。全てがぶどう果汁から出来ています。この点でワインはお酒ですが農産物だと言えます。
ワインの産地
ワインの産地はぶどうの栽培に適している地域で北緯35~45度、南緯30~50度で年間の平均気温が10度~20度です。フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルなどが古くからの産地でしたが、カリフォルニアや日本の他、南半球のチリ、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカなど様々な国でぶどうの栽培が行われワインの産地として広がっています。近年の温暖化により本来ぶどうの栽培が出来ない地域でもぶどう造りが行われ始め、産地の変化が生じ始めています。例えばヨーロッパでは以前はドイツが北限とされて来ましたが、今ではイギリスでもぶどう造りが始まっています。
またぶどうやぶどう果汁は世界中に輸出入されており、ぶどうの産地が分からないものもあります。例えばチリで採れたぶどうをカリフォルニアでワインにして、日本へ輸入してボトリングするなど世界中を駆け巡っているものもあります。
ワインの種類
ワインを思い浮かべると赤・白・ロゼ・スパークリングワインなどですが、醸造方法などにより正式には以下の4つの種類に分けられます。
- スティルワイン・・穏やかなワインという意味で一般的な赤白ロゼワインの事で、スパークリングワインの対比(発泡しない=穏やかな=still)として使われます。アルコール度数は7~14%程です。
- スパークリングワイン・・名前の通り発泡してるワインです。ワインの液体の中に炭酸ガスが溶け込んでいるワインで、ガス圧が弱いものは微発泡性ワインとも言います。有名なのはフランス・シャンパーニュ地方で造られるシャンパンやスペインのカバがあります。
- フレーバードワイン・・ワインに果汁やスパイスやハーブなどの蒸留液を加えたものでフランスのキール(白ワインにカシス)やスペインのサングリア(赤ワインにオレンジ果汁など)が有名です。
- フォーティファイドワイン・・酒精強化ワインといいワインの発酵の前後にブランデーなどのアルコール度数の高いお酒を加えたものです。加えるタイミングによって甘口や辛口のものがあり、アルコール度数は18~20度くらいになります。スペインのシェリー酒やポルトガルのポートワインなどが有名です。
ぶどう品種
ぶどうの品種は1万種を超えると言われていて、世界中で様々なぶどうが造られています。ただ元をたどれば数種類のぶどうから派生されたものです。その中で概ね50種類程度のぶどうがワインの原料となっています。ワインに適するぶどうは果皮が固く、黒ぶどうであれば渋みの元となるタンニンが強いので食用には適さないものが多いようです。主なぶどう品種の特徴は以下の通り。
- カベルネソーヴィニヨン・・赤ワイン用に最も多く栽培されているぶどうです。ボルドーの有名シャトーやオーパスワンなどの高級なワインはこのぶどうを主体として造られます。皮が厚くタンニンが多く含まれており、色の濃い果実のような凝縮感としっかりとした骨格のあるワインが出来上がります。
- ピノノワール・・主にフランス・ブルゴーニュで造られており繊細な味わいのワインに仕上がるのが特徴です。他のぶどうと違い香りが高くタンニンもカベルネソーヴィニヨンと比べ少なく渋みも抑えられたワインに仕上がります。ロマネコンティなどのブルゴーニュの高級ワインなどはこのピノノワール100%で造られています。
- メルロー・・ボルドーの右岸のサンテミリオンなどで多く造られています。有名なのはポムロールのシャトーペトリュスなどです。カベルネソーヴィニヨンに比べ渋みも少ないのが特徴です。カベルネソーヴィニヨンと混醸されて使われることが多い品種です。以前はあまり洗練された印象の味わいではないと評されていましたが、メルロー100%でもイタリア・トスカーナ地区などで偉大なワインを生み出しています。
- シャルドネ・・白ワインを造る上で一番有名なぶどう品種です。主にはフランス・ブルゴーニュ地区で造られますが、今では世界中で栽培されている人気者です。栽培する土壌や天候で味わいが変わるのが特徴です。シャブリのような冷涼な場所では鋭い酸味を帯びたミネラル感がある味わいとなり、オーストラリアなどの暖かい場所では果実味に溢れ酸味も柔らかい白ワインとなります。有名なワインとしてはブルゴーニュのムルソーやシャブリ・モンラッシェなどがあります。
- リースリング・・これも白ワイン用のぶどう品種で主にドイツやフランスのアルザスで造られています。冷涼な地域で造られ、繊細で上品な味わいが特徴のワインに仕上がります。しっかりとした酸味を持ち甘口から辛口タイプまで幅広い味わいのワインが出来ます。青りんごを想わせる軽快なワインが多く造られています。
- ソーヴィニヨンブラン・・元々はフランスのボルドーやロワールで造られる白ワイン用のぶどうですが、今では多くの地域で造られ始めています。特に近年話題となっているのはニュージーランドのソーヴィニヨンブランで、軽快でさわやかな柑橘系の味わいで人気です。グレープフルーツやオレンジピールの苦味などを想わせるスマートな印象があります。
日本では食用とされてきた甲州ぶどうやマスカットなどを使ったワインが多く造られて来ましたが、近年では上記の国際品種を造り始め評価され始めています。その他各国で土着のぶどうでワイン造りが盛んになり様々な味わいのワインが登場してきています。ジョージア(昔のグルジア)では土着のぶどうを使いオレンジワインなどが評価され第4のワイン(赤白ロゼに次ぐ)として話題となりました。(別記事オレンジワインをご覧ください)
ワインのラベル
ワインのラベル表記はその国の法律の違いで、様々で分かりずらいところがあります。通常はワイン名・産地・年号(ぶどうの収穫した年)・ぶどう品種・醸造会社名などですが、その地域の古い習わしや法律などで異なります。例えばこの地域のワインはぶどう品種名を記載してはいけないとか、地域名がそのままワイン名となっていたりと複雑です。
産地名(原産地=アペラシオン)を名乗るのは、各国厳格なルールが完成し始めています。例えば、フランス産(フランス国内のぶどうを使った)→ボルドー産(ボルドー以外のぶどうは使えない)→メドック産(メドックのみ)→マルゴー産(マルゴー村のぶどうのみ)という感じで場所が限定されるほど厳格なワインとされています。
日本でも曖昧なルールの中、輸入ぶどうや輸入果汁を使ったものや国産ぶどうを使ったものは全て国産ワインとしていましたが、近年ぶどうの原産地呼称を明確にするため、国産ぶどう100%で造られたワインを国産ワインではなく、日本ワインと呼称する整備がなされました。