iceberg サンテステフという名をご存じでしょうか？ボルドーのメドックの中でポイヤックやマルゴーなどの名前があまりに有名なので、おろそかにされがちですが、いえいえ結構しっかりとしたワインがたくさん造られている村です！
サンテステフとは
サンテステフ（St-Estephe）とは、フランス・ボルドー地方メドック地区にある村名およびアペラシオン・サンテステフAOCを指します。ボルドー市はフランスで人口9番目の大きさの都市で、パリからTGV高速新線で2時間ちょっとの場所にあります。ボルドーはご存じの通り、市を中心にワイン用のぶどう畑が広がり、フランスのワイン産業の中核都市となります。ボルドー市から北に約55ｋｍの場所にサンテステフがあり、村全体の広さは2354ヘクタールです。
サンテステフの土壌と気候
ここメドックの土壌の特徴は砂利質の土壌に石灰質と粘土質の土壌です。他の村と比較して粘土質が多く含まれる土壌が広がっています。また海洋性気候独特の暑い夏場と比較的温暖な冬があり、湿度も高い地区となります。ジロンド川のおかげで風通りも良く、砂利質の排水能力の高さから、ぶどうの栽培に適している場所です。
サンテステフの味わいの特徴
ワイン全体の特徴としては、重厚で骨格がしっかりとしており、果実味も強いフルボディのワインです。タンニンもしっかりと含まれるため、長期熟成型と言えます。メドックの他の村と比べ粘土質土壌が多い為、味わいがパワフルな傾向になり、カベルネソーヴィニヨン種主体ですが、メルロー種の栽培も多く行われています。
ボルドーとブルゴーニュの原産地呼称の違い
原産地呼称（アペラシオン）はボルドーでは村単位が最小であり、ここでの最小アペラシオンはサンテステフAOCとなります。その他エリアが広がるにつれメドックAOC、ボルドーAOCなどの呼称となります。ブルゴーニュでは、最小のアペラシオンは畑単位であり、かつその畑にグランクリュ・プリミエクリュとランク付けがされていますが、ボルドーにはAOCのランク付けはありません。その代わりメドックの格付けが存在しシャトー（蔵元）単位で決められています。（詳しくは別記事「フランスワインの格付けピラミッド」を参照してください）
サンテステフの格付けシャトー
格付けとはメドックの格付けを指します。これは1855年にパリ万博の為にフランスワインを広める意味で、ワイン（シャトー）に第1級から5級まで格付けしたもので現在に至ります。この格付けはシャトームートンロートシルトが1973年に、例外的に第2級から1級に変更になった以外現在でも変わりません。よって今格付けをやり直すとしたら、昇格するシャトーもあれば格付けから落ちるシャトーもあると言われています。170年も前のものですから、当然と言えば当然ですね。以下は、メドック格付け全61のうちサンテステフにあるのは、以下の5シャトーです。（第1級はありません）
第2級シャトー（全14シャトーのうち2シャトー）
シャトー コスデストゥルネル/CH Cos d’Estournel
第2級に格付けされていますが、今格付けがなされるとしたら第1級レベルと評判のシャトーです。俗にスーパーセカンド呼ばれ、品質及び人気が高いワインです。第2級であるからこそ価格も抑えられているので、コストパフォーマンスに優れているとされています。第1級でしたら10万円台になってしまいますね。変わった名前の由来は、コスとは小石の丘を意味し、トゥルネルは所有者であったガスパールデストゥルネルから来ています。ラベルにも描かれている仏塔があり、これはインドへ輸出していた影響を受けて造られたと言われています。
愛飲者の口コミ レヴュー
豊かな気分になりました・・普段は４桁の値段のワインばかりですが、思い切って買ってみました。タンニン豊かでこういうのを芳醇な味わいというのかな、と思いました。時間がたつにつれ香りも広がってきて、何とも豊かな気分になりました。－匿名さんー
シャトー モンローズ/CH Montrose
サンテステフでも海に近い場所の小高い丘にモンローズはあります。この地はヒース（秋に花を咲かせる野草）に覆われていて秋になると花が咲き、バラの山のようになることからバラ色の山（＝Mont Rose）と名付けられたと言います。このワインは熟成に時間がかかり晩熟のワインとされており、ヴィンテージによっては第1級にも匹敵すると言われており、年々人気を高めているワインです。
愛飲者の口コミ レビュー
優雅で優秀・・本当にこれほどまでに優雅で優秀なワインに出会ったことがありません。 カシスやベリー系の果実味だけでなく、チョコのような誘惑的な色気もどこか含んでいるのですが、それさえも爽やかに成立させるモンローズ。 優雅であり、優秀であるという表現が実にぴったりな素敵な赤ワインです。－匿名さんー
第3級のシャトー（全14シャトーのうち１シャトー）
シャトー カロンセギュール/CH Calon Segur
メドック格付け第3級。みんな大好きハートマークのカロンセギュール！ラベルにハートをデザインしたワインはたくさんありますが、これにはどれも敵わない！下に別記事あり。
愛飲者の口コミ レヴュー
サンテステフのマルゴー・・エティケットの第1印象から、勝手にミーハーなのかと誤解して敬遠していましたが、2017年を頂き、認識を改めました。素晴らしいワインです。「サンテステフのマルゴー」という通り、エレガント。細やかなタンニンが溶け込み、メルローがバランスを取っています。他のヴィンテージも購入しようと思います。ー匿名さんー
第4級のシャトー（全10シャトーのうち１シャトー）
シャトーラフォンロシェ/CH Lafon Rochet
メドック格付け第4級。1959年に現オーナーになる前のラフォンロシェは格付けワインでありながらも、そぐわない畑と設備でした。現オーナーのテスロン家が大規模の畑の改修とシャトーの建て替えをし、1980年代に見事に復活したシャトー。シャトーコスデストゥネルとポイヤックのシャトーラフィットロートシルトに隣接している絶好の位置に畑はあります。
第5級のシャトー（全18のうち１シャトー）
シャトーコスラボリー/CH Cos Labory
メドック格付け第5級。スーパーセカンドのシャトートスデストゥルネルに隣接した18ヘクタールの畑で、オードワ家が所有しています。過去には格付けでありながら、そぐわないと期待もされていませんでしたが、近年急激に品質の向上が見られ、パーカーからもお値打ちワインとの評価を得ているワイン。
サンテステフのクリュブルジョワ
メドックの格付けに認定されなかったシャトーが決起し、1932年にボルドー商工会議所とジロンド農業会議所が「クリュブルジョワ」として444のシャトーを発表しました。これはメドック以外にもオーメドック・サンテステフ・ポイヤック・サンジュリアン・マルゴー・リストラック・ムーリスの8つのアペラシオンが対象で、メドック以外にも品質の高いワインをアピールする目的でした。しかし国が認めたものではなく、また畑が戦争などにより消滅したりして激減しまいます。
その後、クリュブルジョワ組合が国へ働きかけ、ようやく2003年にフランスの農務省お墨付きの格付けを得ることが出来ました。カテゴリーは3つに分かれ、上位から「クリュブルジョワ・エクセプショネル」「クリュブルジョワ・シューペリュール」「クリュブルジョワ」と呼ばれています。クリュブルジョワが数多く選ばれたのがこのサンテステフで、全体のレベルの高さが証明されたわけです。最上級であるクリュブルジョワ・エクセプショネルに選ばれた9つのシャトーのうち、ここサンテステフから4つのシャトーが選ばれています。
| CH Phelan Segur シャトーフェランセギュール | CH Ormes de Pez シャトーオルムドペズ |
| CH de Pez シャトードペズ | CH Haut Marbuzet シャトーオーマルビュゼ |
シャトーレゾルムドペズ（CH Les Ormes de Pez）は2003年にオルムドペズに名称が変更になっています。ただこのクリュブルジョワ制度は選ばれなかったシャトーから反発が出て、2007年に訴訟が起きたりとグズグズしており、落ち着くのには少し時間がかかりそうです。
ハートのワイン シャトーカロンセギュール
サンテステフの中で一番有名なワインと言えば、メドック第3級のシャトーカロンセギュールです。ラベルはハートが描かれ、赤い文字でさりげなくCHATEAU Calon Segurとあるだけで無駄な装飾はなく、なんとも可愛らしいデザインです。ワインのクオリティの高さと相まって、プレゼントなどにも絶好のワインで、日本のみならず世界的に人気を博しています。
このワインは12世紀にジロンド川で材木を運搬する船の名前（Calons=カロン）をこのコミューンの名前として、サンテステフドカロンと呼ばれていました。18世紀にはニコラ アレクサンドル ド セギュール侯爵がガクストン家と結婚し、シャトーカロンセギュールとしました。彼は一時期、ポイヤックのシャトーラフィットやラトゥールをも所有し、メドックのワイン王とも呼ばれていました。彼の言葉である「私はラフィット、ラトゥールでワインを造っているが、私の心はカロンセギュールにある」古い言葉で表現すると「我ラフィット、ラトゥールを造りしが、わが心カロンにあり」はあまりにも有名です。ハートのマークがいつから描かれたのは不明ですが、この言葉とともにバレンタインデーやホワイトデーなどに贈る絶好のワインとされるようになりました。
このワインはカロンセギュールの他に、セカンドラベルであるル マルキ ド カロンセギュール、サードラベルのサンテステフ ド カロンセギュール（旧名ラ シャペル ド カロン）があります。アペラシオンはどれもサンテステフAOC。どちらもラベルにハートのデザインを付けるようになったので、人気が上がっています、パッと見間違えそうです。う～ん・・ビジネスですね！
おすすめのサンテステフ
ル マルキ ド カロンセギュール/Le Marquis de Calon Segur
シャトーカロンセギュールのセカンドラベル。かつてはマルキドカロンセギュール名でしたが、2013年より「ル」が付き、ラベルもファースト同様ハートのマークが付くようになりました。
サンテステフ ド カロンセギュール/Saint Estephe de Calon Segur
シャトーカロンセギュールのサードラベル。かつてはシャペルドカロン名でしたが、2013年より名称変更、またこれもハートのラベルになりました。
シャトー フェラン セギュール/CH Phelan Segur
クリュブルジョワ級エクセプショネル。シャトーモンローズとシャトーカロンセギュールに畑が隣接している。ロバートパーカー氏はメドックの第4級か第5級に匹敵すると評価してるワインでお買い得感バリバリ！
シャトー ド ペズ/CH de Pez
クリュブルジョワ級エクセプショネル。オーナーはシャンパンのクリスタルで有名なルイロデレール社。近年急激に品質が向上され、専門誌などの評価も高い。2017年ヴィンテージよりラベルが変更されています。
愛飲者の口コミ レヴュー
以前セカンドを飲んでバランスと香りがよいと感じたので今回ファーストを購入。2016でもう少し待とうと思いつつも抜栓。期待を裏切らずセカンドを上回るバランスと香りの良さ。格付けシャトーではないが十分その域に達していると実感。決して安くはないが格付けシャトーよりリーズナブルに格付けシャトーレベルを堪能できる。
シャトー オルム ド ペズ/CH Ormes de Pez
クリュブルジョワ級エクセプショネル。オーナーはポイヤックのシャトーランシュバージュを持つカーズ家。
シャトー オー マルビュゼ/CH Haut Marbuze
クリュブルジョワ級エクセプショネル。 メドックでは珍しく長年デュボスク家が家族経営しているシャトー（大企業とかお金持ちが買収しているケースが多いのです！）パーカー氏いわく格付けが見直されれば、メドック第3級にはランクされる・・。
おわりに
ポイヤックのようのグランヴァン第1級がひしめきあう村ではありませんが、全体的にレベルの高いワインが豊富に揃っています。メドックの格付けの第4級や第5級と、品質の良いクリュブルジョワ級では価格が示す通り、ほぼレベルの違いはありません。格付けされていても質が悪いシャトーが過去には多く見受けられましたが、最近はやはりビジネスに目覚め、どんどん進化しています。チリやカリフォルニアで大成功してるカベルネには負けじと、大資本を巻き込み挽回をはかっています。サンテステフは先ずはクリュブルジョワ級から味わうのをおすすめします！
