【ソムリエ徹底解説】 ジュヴレ シャンベルタンの特徴とランク おすすめの6選

シャンベルタンあるいはジュヴレ シャンベルタンという名は、日頃ワインを飲まれない方にもひよっとしたら聞いたことがあるかも知れません。ナポレオンのワインと思う方もいるかも知れません。ブルゴーニュの赤ワインがお好きな方なら、必ずといってよい程飲まれた経験はあるのではないでしょうか?さてそんな有名なジュヴレ シャンベルタンを紐解いてみましょう。

ジュヴレ シャンベルタンとは

コートドニュイ地図
コートドニュイの地図

ジュヴレ シャンベルタン(Gevrey Chambertin)とは、フランス・ブルゴーニュ地方にある村の名前とそこで造られる村名ワインのことです。ジュヴレ シャンベルタン村はブルゴーニュのコートドール県ディジョン市の南、コートドニュイ地区にあり、最大の作付け面積を誇ります。単にシャンベルタンのワインと言うと、その村の中のシャンベルタン畑のワインを指します。ジュヴレ シャンベルタンのとシャンベルタンの違いは、ジュヴレ シャンベルタンは村名および村名ワインであり、シャンベルタンはシャンベルタン村の中の一級畑のワインということになります。ややこしいですね!使われるぶどう品種はピノノワール種のみの赤ワインで白ワインは造られていません。ジュヴレシャンベルタンをGシャンベルタンと略す場合があるので、注意が必要です。

ジュヴレシャンベルタンの歴史と特徴

もともとこの村はジュヴレ村と呼ばれていました。13世紀にベーズ修道院が管理する畑、クロドベーズ(ベースの畑)のワインが評判になっていました。するとベルタンという農夫がその隣の畑を買い、ワイン造りを始めました。その畑はシャン・ドベルタン(=ベルタンの畑)と呼ばれるようになったのです。そのワインも評判になり、1848年にはジュヴレ村をジュヴレ シャンベルタン村と改名したそうです。何とも取って付けたような言われですが、史実のようです。

またナポレオンがシャンベルタンのワインをこよなく愛し、遠征時に必ず持参したと伝えられています。ただこれは歴史家の中でも懐疑的だとする意見も多いようです。ナポレオンの名を冠する畑「クロ・ナポレオン」がフィサンという村にあり、一級畑になっています。ナポレオンの元で指揮官として働いていたクロード・ノワゾが命名したと伝えられています。

ジュヴレ シャンベルタン村には9つのグランクリュ(特級畑 87ha)、26のプルミエクリュ(一級畑 86ha)、その他村名のワイン畑360haがあります。1929年にジュヴレ シャンベルタンの原産地呼称が認められ、1936年にグランクリュの認定がされました。

ブルゴーニュの王の味わいの特徴

味わいの特徴は力強く濃厚な赤ワイン(白ワインは造られていない)で、しっかりとしたタンニンと酸味を持ちミネラル感も強く感じる長期熟成に耐えるワインです。ブルゴーニュワインの中でも特に男性的なワインと呼ばれており、アロースコルトン、ポマールと並び三大男前ワインと言ったところでしょうか。ナポレオンの愛したワインになぞられ、ブルゴーニュの王と呼ばれたりもするほどの人気を博しているのです。石灰岩質土壌からなり適度の起伏を持ち、日照時間が長くぶどうの栽培に最適な条件を備えているからこそ、銘酒が生まれて来るのです。ぶどう品種はピノノワール種のみで、それ以外は栽培されておらずワインにも使われていません。

ジュヴレ シャンベルタン村の9つのグランクリュ(特級畑)

グランクリュ地図
ジュヴレシャンベルタン村グランクリュの地図/出典:ブルゴーニュワイン委員会 Bureau Interprofessionnel des Vins de Bourgogne(BIVD) www.bourgogne-wines.jp

上記がジュヴレシャンベルタンの地図です。濃い赤のエリアがグランクリュの畑となります。グランクリュの中でも地形や土壌により特徴があり、力強さや生産本数などにより価格も様々です。9つのうち別格なグランクリュはシャンベルタン、シャンベルタン クロドベーズ、マジ シャンベルタンの3つの畑で飲み頃を迎えるのは最低12年程度は寝かせておいたほうが良いと思われます。比較的早くから飲めるのはシャルム シャンベルタンやシャペル シャンベルタンです。これらは5年程度から楽しむことが出来そうです。グランクリュの値段は20000円程度から、上は数十万円と高嶺の花、ワインラバーが注目する逸品です。

Gシャンベルタン特級
シャンベルタン村グランクリュ一覧
  • シャンベルタン クロドベーズ・・・最古の畑であり、繊細さとフィネスを持ち合わせながらもしっかりとした骨格を持つ。熟成されると優雅なバランスを発揮する。シャンベルタンと名乗ることも出来る。15.4ha。
  • シャンベルタン・・・品格を持ち最も男性的なワインになる。濃厚で力強く複雑な味わい。ナポレオンが愛飲したとされるワイン。12.9ha。
  • マジ シャンベルタン・・・最も北に位置し濃厚な果実味で野性的と称される。タンニンが多く酸味とのバランスも抜群。9.1ha。
  • シャルム シャンベルタン・・・シャンベルタンの下に位置し柔らかい果実味とボディを持つ。比較的穏やかな印象のワインになる。12.24ha。
  • シャペル シャンベルタン・・・昔礼拝堂があったのが名前に由来。果実味が豊富で上品で深みのある味わいが特徴。5.49ha。
  • ラトリシエール シャンベルタン・・・最も南の畑でミネラル感があり引き締まった味わいと繊細さが特徴。7.35ha。
  • グリオット シャンベルタン・・・グリオットとはサクランボを意味し、まさしくサクランボのアロマを感じる。肉厚でしっかりとした果実味を感じるボディ。グランクリュ最小面積。2.73ha。
  • リュショット シャンベルタン・・・マジシャンベルタンの斜面の上に位置し、やせた土壌にある。タンニンは強いが熟成をしていくうちに丸みを帯び果実味が花開く。上の一部はアルマンルソーのモノポール、クロデリュショット。3.3ha。
  • マゾワイエール シャンベルタン・・・シャルムシャンベルタンの隣の畑でエレガントなワインとなる。シャルムシャンベルタンを名乗れるので、マゾワイエールシャンベルタンを名乗るのは少ない。12.24ha。

グランクリュクラスになると収穫のぶどうの良い年・当たり年が気になるところです。ちなみに近年の超当たり年は2015年、2010年、2009年。それに次いで2014年、2016年、2017年という事です。

ジュヴレシャンベルタン村の主なプルミエクリュ(一級畑)

Gシャンベルタン一級畑一覧
ジュヴレシャンベルタン一級畑一覧

ジュヴレ シャンベルタン村には26のプルミエクリュがあります。ジュヴレ シャンベルタンの特徴を持ちながらも個性あるワインが豊富です。中にはグランクリュを上回る価格のものも見かけますが、概ねグランクリュの半額程度の価格(概ね13000~20000円)なので頑張れる範囲でしょうか。主な有名で人気のプルミエクリュは以下。

  • クロ サンジャック・・・グランクリュと遜色のない力強く凝縮感がありしっかりとしたストラクチャーと複雑味を持つ
  • レ カズティエ・・・日照時間が長く果実味が豊富で優雅な味わいを持つ
  • ラヴォー サンジャック・・・南側の斜面で熟した果実味を持ち酸味とのバランスが良い
  • プティット シャペル・・・シャペルシャンベルタンの隣の畑で味わいも似ている。上品な優しさを持つ
  • オー コンボット・・・グランクリュに囲まれた畑でミネラルが豊富でバランスが良い
グリオットの畑

ジュヴレ シャンベルタン(村名ワイン)

グランクリュやプルミエクリュの華やかさに隠れがちですが、村名ワインでも当然ながら素晴らしいものです。村全体を表現する男性的で力強いワインである事は間違いありません。但し出回るジュヴレシャンベルタンが玉石混合であることも否めません。中には3000円をはるかに下回るものも見かけます。安いものが全て悪いわけではありませんが、その名にそぐわない品質もある事だけは覚えておきましょう。決して3000円を下回る(セールとかの事情がない限り)ようなワインではない事は、覚えておきましょう。同じワインでもラベルにVIEILLES VIGNES(ヴィエイユヴィーニュ=古木から出来るぶどう)などとヴァリエーションもあります。

ラベルの表記

ジュヴレシャンベルタンのラベルの表記(=ワイン名)は少し変わっています。村名ワインは「ジュヴレシャンベルタン」との表記であり、一級畑は「ジュヴレシャンベルタン プルミエクリュ 畑名」となりますが、特級畑はワイン名が「シャンベルタン」や「シャンベルタン クロドベーズ」など畑名がワイン名として記載されます。ちなみにシャブリなどは特級畑でも「シャブリ グランクリュ レクロ」などと畑名がいきなりワイン名として記載はされません。

シャンベルタンのラベル
ジュヴレシャンベルタンのラベルの見方

ジュヴレ シャンベルタンの価格

ジュヴレシャンベルタン(村名)は7000円程度から、プルミエクリュは10000円程度から、グランクリュは20000円程度からが概ねの価格です。ただプルミエクリュでもグランクリュをはるかに凌ぐ上質のワインも傑出しており、グランクリュを超える価格のワインも多く見られます。長期熟成ワインなのでヴィンテージによってもまちまちとなります。

ちなみにクロードデュガのグリオットシャンベルタン1993年は、ロバートパーカーが100点満点を付けたことで知られています。ブルゴーニュワインで満点が付いたのがたった15本のみで、ロマネコンティが5本、ルロワが5本でその他の5本のうち1本がクロードデュガです。1993年は生産が1000本にも満たないことから、もし探し当てたら凄いかも!

飲み頃と保存方法

ジュヴレ シャンベルタンは長期熟成に向いたワインです。グランクリュの中でも別格なのはシャンベルタン、シャンベルタン クロドベーズ、マジ シャンベルタンの3つの畑で、飲み頃を迎えるにはかなりの時間を要します。グランクリュは最低10年、プルミエクリュは最低5年、村名ジュヴレシャンベルタンは最低3年と覚えておきましょう。現在日本で入手出来るジュヴレ シャンベルタンは3年を経過したものが多いかと思われます。入手したらヴィンテージを確認下さいね。

このワインに限りませんが、保存方法により飲み頃が左右されます。ワインセラーがあるに越したことはありませんが、一番してはいけない事は冷蔵庫保管です。冷蔵庫内ではコルクが乾燥してしまい酸化する恐れと、振動がいけません。ワイン保管で大敵なのは「乾燥」「光」「振動」「温度差」です。温度はセラー保管で14-16℃の一定が望ましですが、ある時は14℃、ある時は22℃などの温度差がダメにしてしまいます。新聞紙などに包み、出来れば冷涼な場所(18℃でもいいので一定な温度のところを選ぶ)に寝かせておいて下さい。

料理との相性と飲み方

このワインはブルゴーニュで1.2を争うほどの骨格のあるワインです。しっかりとしたタンニンは熟成後にまろやかになるとはいえ、飲みごたえは抜群です。ブルゴーニュ発祥の有名な料理で「コックオーヴァン」という雄鶏の赤ワイン煮込みがあります。ジュヴレ シャンベルタンが多く使われます。料理に使うのは一般ワインで、合わせるワインはその上級ワインというしきたり・ルール?をご存じですか?となれば料理には村名ワイン、合わせるのは一級。特級ワインですね。

また現地ではキジやウサギなどのジビエ料理との相性が良いとされています。日本ではあまりお目にかかりませんが、脂分の多いワインにはピッタリです。ステーキはもちろん、うなぎやすき焼き、煮魚などの味付けの濃い料理にも負けません。タンニンが脂分を口の中で中和してくれるので、美味しく頂けます。逆に軽めの肉料理、例えば豚しゃぶや焼き魚などには不向きです。ワインの力強さが料理に勝ってしまい、料理の味わいをぼかしてしまう恐れがあります。

ブルゴーニュワインを愉しむうえで大切なのは、ずばり香りです。ボルドーワインはぶどう品種を掛け合わせて味わいの奥行きを愉しむワインに対して、ブルゴーニュワインはピノノワール種一種類です。つまり奥行きでは無くて香りの広がりを愉しむものなのです。最初の一口の香りから、飲んでいくうちにワインは酸化して香りが立ってきます。是非それをのがさないように!ブルゴーニュワイン用のグラスがチューリップ型(ブランデーグラスのように)になっているのは、口廻りに香りを集約させる為なのです。専用のグラスが無くても構いませんが、是非味わいと一緒に香りも大切に!

おすすめのジュヴレ シャンベルタン村のワイン6選

しっかりとした果実味と酸味のバランスが良いファーストステップの村名ワイン!

Gシャンベルタンマルシャン
ジュヴレシャンベルタン マルシャン

ジュヴレ シャンベルタン ヴィエイユヴィーニュ JPマルシャン

「ブドウ本来の味わい」と「土壌の特徴」を大切にするため、アペラシオン、畑ごとに小容量のタンクで醸造を行う。マルシャン氏が常日頃口にする言葉が、彼らの目指す生産者像を如実に物語っています。「我々は決して大規模な生産者でもなければ、高級な生産者でもない。それを目指そうとは全く思わない。目指すのは、“身の丈に合った”ワイン造りと“価格的にも品質的にもちょうど良い”ベスト・ヴァリューなワインを供給する生産者であること。」 ワインのお好きな方へのプレゼントに迷ったらコレ!

メゾン ジャンフィリップマルシャン ジュヴレ シャンベルタン

タンニンと凝縮感の調和とはこういうワインだ!村名ワイン

Gシャンベルタンジョフロワ
ジュヴレシャンベルタン アルマンジョフロワ

ジュヴレ シャンベルタン アルマンジョフロワ

ジュヴレ・シャンベルタンらしい力強さとフィネスを合わせ持つワイン。芳醇で複雑なアロマ、いきいきとして凝縮した果実味が素晴らしい満足感の高い1本です。ブルゴーニュラヴァ―が愛するクラシックスタイル。木苺、野イチゴのような赤果実の香りと引き締まった酸味が特徴。オーク樽 12カ月(仏産、228L、新樽比率20%)

アルマンジョフロワ ジュヴレ シャンベルタン

DRCを彷彿とさせる熟成感と味わいの美しさを持つプルミエクリュ!

Gシャンベルタンプルミエアミオ
ジュヴレシャンベルタン プルミエ アミオ

ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ レ コンボットPアミオ

特級畑に囲まれた立地に恵まれた畑。ジュヴレ・シャンベルタンらしい力強さと美しいフィネスが魅力。ピエール・ミレマン氏は現在DRCでコンサルタントを務める唯一の人物。その他にもドメーヌ・デュジャックやドメーヌ・アミオ・セルヴェルのコンサルタントも務めています。DRCを始めとして一部の生産者が根強く実践する「全房醗酵」は、彼が支持する手法のひとつ。

モダンなスタイルの中にも伝統を感じる完璧なバランスのプルミエクリュ!

Gシャンベルタンプルミエルブルソー
ジュヴレシャンベルタン プルミエ ルブルソー

ジュヴレ シャンベルタン プルミエクリュ フォントニー アンリルブルソー

伝統を守りながらも改革を進めているドメーヌ。日照時間の長い畑から生まれる密度の濃い詰まった果実味と美しい酸とのバランスが完璧な1本です。1929年にはアンリ・ルブルソー将軍を筆頭として原産地呼称ジュヴレ・シャンベルタン保護連合が結成され、同年に制定されたA.O.C.ジュヴレ・シャンベルタンの厳格な運用を今日まで守り続けています。

ジュヴレ シャンベルタン プルミエ クリュ フォントニー ルブルソー

伝説のドメーヌ、デュガのDNAを体感せよ!グランクリュ

シャルムシャンベルタンジブリオット
シャルムシャンベルタン ジブリオット

シャルム シャンベルタン ラ・ジブリオット

ラ・ジブリオットは、ジュヴレ・シャンベルタン最高峰に数えられる「クロード・デュガ」のネゴシアン部門です。その年最上の出来と感じたワインのみを購入し、熟成、瓶詰めして世に送り出しています。樽買い後のワインはドメーヌ・クロード・デュガと同じように瓶詰めまでの工程が行われます。ジュヴレ最高峰の生産者が舌で選んだワイン。美味しくないわけがありません。

これぞシャンベルタンと言わしめる至高の一本!グランクリュ

シャンベルタンシャンタルレミー
シャンベルタン シャンタルレミー

シャンベルタン シャンタルレミー

ドメーヌ・ルイ・レミーは、1821年設立。現当主のシャンタル・レミー女史で6代目。生み出されるワインのスタイルはクラシックで緻密。抽出はあまりせず、全てのアペラシオンで新樽比率が3分の1程度と低く、2年間の樽熟成をさせ、無清澄、無濾過で瓶詰めされる。生産量の約3分の1は熟成させ、飲み頃と判断してから販売を開始するという、熟成の魅力を味わうことの出来る貴重なドメーヌ。

シャンタル レミー シャンベルタン

おわりに

ソムリエの資格取得試験には高い確率で出題されるジュヴレシャンベルタン。グランクリュ名やプルミエクリュ名の覚え方などが話題にされます。それ程ブルゴーニュを代表される注目の赤ワインなのです。ブルゴーニュは天候に左右されることが多く、生産量もまちまちです。現在はとても少なくなり価格も高騰しているようです。15年程前は3000円台で良質のものが手に入りましたが、最近は難しいようです。高額なワインですが、機会があれば是非飲んでみるべきワインです!

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