1995年にイタリアの格付けで最高のDOCGに昇格して以来、瞬く間に世界に広がり、その高品質さからイタリアの奇跡やフランチャコルタの奇跡と呼ばれるまでになったワインがあります。そんなシンデレラのようなワインをご紹介します。DOCGとは別記事「イタリアワインの魅力」をご覧下さい。
フランチャコルタとは
フランチャコルタとは、イタリアのロンバルディア州東部のフランチャコルタ地区で瓶内二次発酵(=シャンパーニュ方式)で造られるスパークリングワインです。ミラノの東にあるブレシアの上、イゼオ湖の南に位置する丘陵地帯にある畑はわずか3000haと小さな地区です。イゼオ湖はミラノのコモ湖同様、避暑地として有名であり、温暖な気候です。湖があるおかげで昼夜の寒暖差が生まれ、平均気温20℃の地は氷河による出来た氷堆積土壌は水はけも良くミネラル分が豊富です。
フランチャコルタの特徴
1961年に僅か29haのピノディフランチャコルタを造るところから始まり、1990年にはDOCに認定されました。同時にフラチャコルタ協会が設立され、徹底した品質向上を図り1995年にはDOCGへと昇格を果たしました。
特徴は何といっても品質重視の造り方にあります。瓶内二次発酵の手順はシャンパンとほぼ同じ工程を経て造られますが、一つ一つの工程において、シャンパンよりも厳しい規定が設けられています。例えばシャンパンにはないぶどう品種のブレンド比率の上限であるとか、瓶内熟成の最低期間の長さなどです。
シャンパンとの違い
品名 | 瓶内熟成期間 | 収穫量1haあたり |
---|---|---|
フランチャコルタ | 18カ月以上 | 10トン |
シャンパン | 15カ月以上 | 12トン |
カバ(カヴァ) | 9カ月以上 | 14トン |
- 白ぶどうの全房圧搾・・・白ぶどうは除梗などを行わずにそのまま圧搾を掛け一番搾りのみを使用(一般的なシャンパンは二番搾りまで使用)
- 一次発酵の期間・・・概ね6か月以上時間をかける(一般的なシャンパンは約3か月)
- フランチャコルタの瓶内二次発酵の時間は18カ月以上の規定(シャンパンの規定は15カ月以上)
- フランチャコルタの作付面積・・・3000ha(シャンパンは35,000ha)生産量はシャンパンの5%程度
その他瓶詰完成後にすぐに出荷せずに倉庫に数か月寝かせる(アッフィナメント)など、ほぼすべてにおいてシャンパンよりも厳格な規定を設けています。
フランチャコルタのぶどう品種
フランチャコルタに使われるぶどう品種は4つ
ぶどう品種 | 栽培比率 | 使用可能比率 | 味わい |
---|---|---|---|
シャルドネ種 | 80% | 最大100% | 酸味がありフルーティな印象 |
ピノビアンコ種 | 5% | 最大50% | エレガントさを持ち香ばしい香り |
ピノネロ種(黒ぶどぶどう) | 15% | ロゼは最低35% | 長期熟成向け(=ピノノワール) |
エルバマット種 | 極少 | 最大10% | この地の土着ぶどう品種 |
使用可能比率とは、例えばピノビアンコ種を50%以上使って造ってはいけなく、ロゼはピノネロ種を35%以上使わなければいけません。
フランチャコルタの種類
造り方による分類
- フランチャコルタ ブリュット・・・瓶内熟成18カ月、醸造と合わせて25カ月の熟成を要する。洗練された上品さと爽快な酸味。ガスの気圧が5~6気圧。
- フランチャコルタ サテン・・・ピノビアンコ種は50%以内で使えるがほとんどがシャルドネ100%で造られる。繊細な泡立ちと絹を想わせる口当たり。1995年に商標登録された。
- フランチャコルタ ロゼ・・・ピノネロ種の果皮を一緒に漬け込むセニエ式で造る。シャンパンのように赤ワインを入れることは出来ない。
- フランチャコルタ ミレッジマート・・・ぶどうの出来が良い年に造られるもので、単一ヴィンテージのぶどうを85%使用。収穫から37カ月を要する。その年の個性が出る。
- フランチャコルタ リゼルヴァ・・・良年のミレッジマートを使い、酵母のオリを入れたまま最低5年間熟成させる極上のフランチャコルタ。
ドサージュによる分類
澱引き(デゴルジュマン)をしたのちに加糖(ドサージュ)されるリキュールの量によって甘辛の度合いが変わって来ます。
- ノンドサート・・・1リットル当たりの糖質は3g以下、超辛口タイプ。
- エクストラブリュット・・・1リットル当たりの糖質は6g以下、極辛口タイプ。
- ブリュット・・・1リットル当たりの糖質は12g以下、通常の辛口タイプ。
- エクストラドライ・・・1リットル当たりの糖質が12g~17g、柔らかな甘さ。
- セック・・・1リットル当たりの糖質が17g~32g、やや甘口タイプ。
- ドゥミセック・・・1リットル当たりの糖質が33g~50g、甘口タイプ。
フランチャコルタの味わいと料理
フランチャコルタの味わいの特徴は、そのぶどうの完熟度にあります。平均気温20℃の温暖な気候に加え、寒暖差があるのでぶどうはしっかりと熟成をします。シャンパーニュの平均気温が16℃で冷涼な地ゆえに完熟されないぶどうを使って酸味を利かしたものに対し、フランチャコルタはふくよかな果実味が残るのです。ドサージュの分類の残糖度はシャンパンとほぼ同じですが、シャンパン程ドサージュの量は多くありません。瓶内二次方式でも完熟度が高い為、シャルマ方式のような豊かな果実味を感じることが出来るのです。
料理との相性は、和食にとても良く合うと言われています。シャンパンの酸味先行の味わいよりも控えめで、ふくよかな果実味を兼ねそなえる味わいは和食の出汁にピッタリとマッチします。それゆえ、フランチャコルタの輸入量は日本がダントツに一位となっています。もちろん和食のみならず、繊細な泡立ちゆえに守備範囲はとても広いと言えるでしょう。
おすすめのフランチャコルタ ランキングTOP5
第1位 フェルゲッティーナ フランチャコルタ ブリュット
フェルゲッティーナのフランチャコルタには明確なスタイルがあります。それは純粋さ・熟成美・繊細さ・上品さ。全て自社ぶどうで造られいて、言わばフランチャコルタのRM(レコルタンマニピュラン)です。品質重視の哲学が生かされており、フレッシュで透明感のある薄い藁色、グレープフルーツのようなフルーティなアロマにキメの細かい泡立ちでのどごしも滑らかです。シャルドネ90%ピノネロ10%、サクラアワード2019銀賞
第2位ベラヴィスタ グランデ キュヴェ アルマ ブリュット
イタリアが誇る美泡フランチャコルタのトップ生産者による、スタンダード・キュヴェ。色とりどりの折り紙が描かれたパッケージのイメージ通り、フルーツの甘さや酸味、バニラやイーストの風味など、多彩な要素をもった表情豊かで非常にバランスの良い仕上がりです。世界でも高く評価されている名門で、ミラノ・スカラ座のオフィシャルサプライヤーとしても知られています。シャルドネ79%、ピノネロ20%、ピノビアンコ1% *ラベルがオレンジ色から変更になりました。
第3位フェルゲッティーナ ミッレディ フランチャコルタ ブリュット
1,000日間(ミッレディ)以上もの熟成期間を経て表現される深いコクとキメの細かい泡立ちが素晴らしいです。シャルドネ 100%デゴルジュマンまでの瓶内熟成36カ月。フェルゲッティーナは特許取得している特殊なピラミッド型のボトルを採用しています。このボトルは、滓と触れる面積を広げ熟成による味わいにコクと旨味を一層深く感じることができるよう、細かく計算された形状になっています。
第4位フェルゲッティーナ フランチャコルタ サテン
蜂蜜のような香りや酵母香が心地よい。洋ナシや白い花の華やかな香りも魅力です。ふくよかさの中に優しさがあります。泡立ちは強すぎず、上品さと繊細さが全面に現れています。このボトルもサテン同様特殊なピラミッド型をしており、滓と触れる面積を広げ熟成による味わいにコクと旨味を一層深く感じることができるような計算がなされています。シャルドネ100%
第5位ベラヴィスタ フランチャコルタ ロゼ
ミラノ・スカラ座のオフィシャルサプライヤーのベラヴィスタ。こちらは全生産量の約3%しか造られない稀少なロゼ。芸術的で美しいデザインは、贈り物にも最適なスパークリングワインです。繊細なペールピンクがキラキラと光り輝き、シナモンや焼き上がりトーストの香ばしいアロマに、桃やワイルドベリーの香りが続きます。爽やかでリンゴやスターフルーツにレモンの皮とジンジャーのニュアンスがアクセントとなっています。シャルドネ56%、ピノネロ44%
おわりに
シャンパーニュよりも厳格な規定で造られるというのは驚きですね。ただ厳格なゆえ高品質なワインが出来、世に認められたというあまりワインの世界では類を見ないと思います。厳格さは造られる量も減ることを意味するので、ついビジネスを考えると質より量をとってしまいがち。皆さんに是非飲んで頂きたいけど、世界中にファンが広まり価格が高騰する懸念がありますね。