ブルゴーニュにフィサンというアペラシオンがあります。グランクリュのワインが無いので、モレサンドニ同様あまり知られていません。いや、モレサンドニ以上に知られていないでしょう。知っている方なら「ナポレオンの畑があるところでしょ」程度でしょうか。イヤイヤ地図を良く見て下さい、ジュヴシャン村のお隣様ではないですか!まだ陽の目を見ないワインがありそうです。
フィサンとは
フィサン(Fixin)とは、フランス・ブルゴーニュ地方のコートドニュイ地区のフィサン村全域及び南隣にあるブロション村(Brochon)の村名ワイン(Fixin AOC )です。フィサンをフィクサンとも呼ぶカタログや資料もあります。また、このアペラシオンはコートドニュイヴィラージュ(Cote de nuits Village)と名乗ることも出来ます。12のプルミエクリュがあり、グランクリュはありません。
ワインの年間平均生産量は、赤(ピノノワール種)が514,045本、白(シャルドネ)が21,679本で、96%がピノノワール種を使った赤ワインで白はほとんど見かけることはありません。(ブルゴーニュワイン委員会調べ)
フィサンの土壌と天候
フィサンはコートドニュイ地区の北に位置しており、畑は東と東南に向いています。標高は350~380mで、日照量もありぶどうの生育にも適しており、凝縮感のあるぶどうが栽培されています。他の地区同様に大陸性気候で夏は暑く乾燥した日が長く、冬は寒さが厳しい場所になります。ただ北側にあるのでぶどうの熟成が遅く、「冬のワイン」とも言われています。全体的な土壌は石灰岩と泥炭土であり、表土は小石混じりの褐色の石灰岩で覆われています。
フィサンの味わいの特徴
南隣がジュヴレ シャンベルタン村であり、土壌の形成が似ていることから、味わいの特徴もジュヴレ シャンベルタンに似ています。長期熟成に耐えうるしっかりとしたタンニンと酸味を感じます。深い色調でふくよかな味わいに加え、エレガントな味わい・・・なるほど!これは隠れた名品があるかも知れません。
フィサンのプルミエクリュ
Le Meix Bas レメバ | Clos Napoleon クロナポレオン | Le Village ルヴィラージュ | Aux Cheusots オーシューゾ | Le Clos du Chapitre ルクロデュシャピトル |
La Perriere ラペリエール | Clos de la perriere クロデラペリエール | En Sushot アンスーショ | Les Hervelets レエルヴェレ | Les Arverets レアルヴェレ |
Queue de Hareng コーデアレン | Clos de la Perriere クロデラペリエール |
プルミエクリュの数はブルゴーニュワイン委員会の資料によると上記12のクリマの名が挙がっています。しかしフランスのフィサンのアペラシオン政令(フランス語)を確認すると、以下の6つのクリマの記載となっています(地図参照)。これはコミューンにまたがるクリマをどうカウントするかによって違いがある、またはプルミエクリュのクリマ自体は12であるが、集約され6つの名で販売されていると思われます。
*Clos de la Perriere *Clos Napoleon *Clos du Chapitre *Les Meix Bas *Arvelets *Hervelets
フィサンの代表的なプルミエクリュ
クロ ド ラ ペリエール
以前にこの場所に採石場(ペリエール)があったことが、この畑の名の由来です。フィサン村とブロション村にまたがった6.7ヘクタールの畑で、1853年よりドメーヌ・ジョリエの単独所有(モノポール)となっています。かつてはジュヴレ シャンベルタンのグランクリュに相当する価格で取引されていたこともあり、1930年代には「ペリエールシャンベルタン」の名でグランクリュ申請をしたことがありましたが、叶いませんでした。現在もグランクリュへの申請運動が行われています。ただ、エージェントがいないのか、ネットで検索してもほとんど見つけられませんでした。6.7ヘクタールを考えるとそれ程生産本数が好くないとは思えないのですが。
クロ ナポレオン
1830年頃よりジュラン家の単独所有の畑となっています。1850年頃にナポレオン1世により畑の周りに石垣が築かれ、ナポレオン軍の指揮官でありフィサン出身のクロード ノワゾにより、この畑をクロ ナポレオンと名付けられ認められました。ノワゾは後に自分の名を付けたノワゾ公園を造り、そこにナポレオンの銅像「ナポレオンの目覚め」を建立しました。ジュランのワインにはこのナポレオンの銅像の絵が描かれています。ナポレオンというと隣のシャンベルタンのワインを愛したことで知られていますが、この畑の隣にはナポレオン博物館があります。面積は1.83ヘクタール。
おすすめのフィサン
前述のようにグランクリュが不在ゆえあまり注目されず、価格もこなれているのがこのフィサンです。ジュヴレ シャンベルタンに似た味わいであり、コスパも良いとされています。グランクリュが誕生し価格が上がる前に是非試して欲しいアペラシオンです。日本では引きが弱いので、ネゴシアン物でもあまり多くは出回っておりません。
ドメーヌ エルヴェ シャルロパン
1998年より元詰めを始めたまだ若いドメーヌですが、こなれた値段で瞬く間にフランス国内で人気を博したドメーヌです。それ以降海外から引く手あまたの人気ドメーヌになりました。凝縮感の高い高品質なワイン造りをしており、コスパに優れた一本です。年産7700本。
ドメーヌ ベルトー ジェルベ
先代のドニ ベルトーから娘のアメリーが引き継ぎ、ベルトー ジェルベを立ち上げています。他にはジュヴレ シャッベルタンやヴォーヌ ロマネ・エシェゾーなど綺羅星のような畑も引継いでいる凄いドメーヌです。 Clos du Village、Fixey、AuxPres、La Sorgentiere の4つのリューディ(区画)のぶどうをブレンドし、果実味溢れる凝縮感のあるフィサンです。
ドメーヌ モンジャール ミュニュレ
ヴォーヌロマネを拠点とし、9世代にわたり素晴らしいワインを造り続けているモンジャールは35ものアペラシオンと30ヘクタールの畑を所有しています。このフィサンは平均樹齢50年のぶどうから造られており、凝縮感がありラズベリーなどの香りを持った人気ある一本です。
ドメーヌ ピエール ジュラン クロナポレオン
前述したプルミエクリュ「クロナポレオン」畑のフィサンです。ドメーヌピエールジュランの単独所有(モノポール)で、フィサンでは最も高い評価を得ているワインです。生産量が少なく日本への入荷も僅少です。ラベルには銅像「ナポレオンの目覚め」が描かれていますが、少しダサい感じです。ナポレオンの文字と「N」のマークで思わず、ブランデーを想像してしまいます!
おわりに
今は知る人ぞ知るのコストパフォーマンスバッチリのフィサンですが、いずれ値上がり必至でしょう。ブルゴーニュ全体の近年の爆値上がりには閉口してしまいます。プチジュヴシャンと言われてるかどうか(勝手に言っていますが)分かりませんが、ジュヴレシャンベルタンのニュアンスを持ったフィサンは覚えておいたほうが良さそうです。それにしてもフィサンは、「ナポレオンLOVE」が凄くて面白いですね!