2021年 ボジョレーヌーヴォーは買いか? 昔と今の違いとおすすめ 9選

毎年秋になると「ボジョレーヌーヴォー解禁!」というニュースを目にします。昔ほどのお祭り騒ぎは無くなっていますが、さてそもそもボジョレーヌーヴォー(ボジョレーヌーボー)とは?。「ボジョレーヌーヴォーなんて美味しくない!あんなのはワインじゃない!」と両断する声や「美味しいよね!」とその評価は分かれますが、実際はどうなのか、果たして「買いか?」「美味しいのか?」・・ボジョレーヌーヴォーの特徴や歴史を解説していきます。予約される方は参考にしてみてくださいね!

ボジョレーヌーヴォーとは

ヌーヴォーの意味と決まり事

フランス・ブルゴーニュ地方の南にボジョレー地区はあります。「Beaujolais」の日本語訳なのでボージョレとも言われています。その地区の今年採れた「ガメイ種」というぶどうのみで造られ、毎年11月の第2木曜日に解禁されるワインを指します。解禁とは「飲んでいいよ~」という事で、輸入会社を通し酒屋さんに並ぶのが「解禁日」となります。ヌーヴォー(=Nouveau)とは、「新しい」を意味するフランス語なので、ボジョレーヌーヴォーは直訳すると、「ボジョレー地区の新酒」ということになります。ワインによっては、ボジョレープリムール「Beaujolais Primeur」と表記されているものがありますが、プリムールとは「最初の」という意味で、ボジョレーヌーヴォーと同じ意味として扱われます。(本来はボルドーなどの初出荷のワインの樽一本買いなどの時に使われる用語)

ボジョレーヌーヴォーの味わい

色味は明るいルビー色をしており、スミレを想わせる花の香り。タンニンがほとんどない分、渋みは感じられません。ワインの味わいはベリー系で表現される事が多いのですが(ブラックベリー、ラズベリー、ブルーベリー、ストロベリー)ボジョレーはストロベリーのようなニュアンスを持っています。とてもライトな口当たりで果実系の甘さを感じ、普段ワインを飲まない方にとっても飲みやすいワインです。逆にワイン(特にしっかりとした味わいの好きな方)を良く飲まれる方にとっては、ワインらしくないジュースのようだと揶揄される場合があります。

ボジョレーの種類

ボジョレー地図
ボジョレー地図

ボジョレー地区には4つのAOC(アペラシオン=原産地呼称)があります。つまりボジョレーはヌーヴォー以外も造られています

  • ボジョレー(Beaujolais)・・・地区名AOCで赤・白・ロゼがあります。赤・ロゼははガメイ種、白はシャルドネまたはアリゴテ種を使う。
  • ボジョレーシューペリュール(Beaujolais Superieur)・・・ボジョレーに比べ最低アルコール度数が0.5%高い。赤のみでほとんど見かけない。ガメイ種のみ。
  • ボジョレーヴィラージュ(Beaujolais Villages)・・・ボジョレーの北側にある39の指定された村のワインで、赤・白・ロゼがある。赤・ロゼははガメイ種、白はシャルドネまたはアリゴテ種を使う。
  • クリュボジョレー(Cru Beaujolais)・・・ボジョレー地区の中でも特に品質が高いと認められた村に与えられるAOCで、赤のみの生産でガメイ種のみです。次の10の村となります。1.サンタムール(Saint amour)2.ジュリエナス(Julienas)3.シェナス(Chenas)4.ムーランナヴァン(Moulin a Vent)5.フルーリ(Fleurie)6.シルーブル(Chiroubles)7.モルゴン(Morgon)8.レニエ(Regnie)9.ブルイィ(Brouilly)10.コートドブルイィ(Cote de Brouilly)

上記のうち、ヌーヴォーとして出荷出来るのは、「ボジョレーAOC」と「ボジョレーヴィラージュAOC」の赤とロゼのみです。白はヌーヴォーとして出荷は認められていません。

解禁日と同時に白のヌーヴォーとして、ワインショップなどに陳列されているものがあります。これはヌーヴォーですが、実はボジョレーではありません。ボジョレー地区の上にマコネー地区というエリアがあります。その地区のマコンヴィラージュという場所では、シャルドネ種で造られる白ワインがあり、ヌーヴォーとして出荷が出来るのです。水はけが良い地域で早くに成熟するので、良質な新酒として同じ時期に出荷されます。つまり同時期に並ぶ白のヌーヴォーは「マコンヴィラージュヌーヴォー」と言い、ボジョレーの記載はありません。またこのマコンヴィラージュには赤ワインはありません。

ボジョレーヌーヴォーの歴史

この地は9世紀にリヨネー及びフォレ伯爵ギヨームが治めていた男爵領でした。ギヨームの死後息子のベラールが継承し、ボージュー卿(sire de Beaujeu)を名乗ったことから、ボジョレーの地名となりました。ボジョレーのワインの歴史は1395年に始まります。現在植えられているガメイ種のぶどうは、当時ボジョレー地区の上にあたるコートドールで栽培されていました。しかしコートドールでのガメイ種は収穫量は多かった反面、酸味が強すぎて色味も薄いワインしか出来ませんでした。

それを好まなかった時のブルゴーニュ公フィリップ2世が「ガメイ種禁止の勅令」を出し、コートドールでの栽培を禁止してしまいました。(別途記事「魅惑のヴォーヌロマネ」も参照してみて下さい)ガメイ種は全て引き抜かれ、そのぶどうの苗をこのボジョレー地区に移植したのです。するとコートドールではダメであったガメイ種は、ボジョレーでは土壌との相性が良く、ワインの評価も上がっていきました。石灰質土壌がメインのコートドールよりも花崗岩質の土壌に上手くマッチしたのです。以降早くから飲めるワインとして人気が出て、パリなどの大都市に出荷されるようになったのです。

フランスの軍隊への供給用確保する為、出荷は1950年までは12月15日までは許されませんでしたが、生産者の働きかけで1951年には11月13日に解禁することが許されました。この時初めてこのワインをヌーヴォー(Nouveau)と呼ばれるようになります。1967年には生産者が集まり、ヌーヴォーを世界に広めるべくイベントを開催しました。この時に奔走した一人が、ジョルジュデュブッフ氏と言われています。1968年から世界へ向けて輸出を始め、1985年から解禁日が11月の第3木曜になっています。

ボジョレーヌーヴォーの造り方

ボジョレーでのガメイ種の収穫は8月下旬から9月の上旬にかけて行われます。それが何故11月にワインとして飲めるかといういと、その製法にあります。マセラシオンカルボニック(炭酸ガス浸漬法)と呼ばれ、密封状態のステンレスタンク内でぶどうを破砕せずに、炭酸ガスの力でぶどうを発酵させます。これには2種類の方法があり、一つは炭酸ガスを注入する方法、もう一つはタンクにぶどうを詰め込むことで破砕したぶどうが発酵することで発生する炭酸ガスを使う方法で、「マセラシオンナチュレル」と呼ばれています。ボジョレーヌーヴォーはこのマセラシオンナチュレルという方法を使います。

いずれにせよ通常の酵母を使った発酵方法ではなく、短時間に醸造が可能な特殊な製法を用い、フレッシュなワインに仕上げます。マセラシオンカルボニックは、ボジョレーヌーヴォーのみならず、ライトな味わいのワイン造りにおいて世界中で使われている製法です。

日本でのボジョレーヌーヴォーの過去

バブルに乗っかる

日本へは1976年に初めて輸入され、1980年代後半にはボジョレーヌーヴォーのブームが訪れます。日本がバブル景気に沸いていたころ、ヌーヴォーの価格が4000円もしたことを覚えています。解禁を待ちきれずに、成田空港近くで大々的にヌーヴォーパーティーやホテルなどでも解禁パーティなどの催しが行われていました。輸入量のピークは2004年で、何と100万ケースを超えるヌーヴォーが日本に入って来ました、これは日本人の大人の5人に一人が一本を開けた、あるいは日本の大人全員が一杯飲んだ換算になります。

初物好きの日本人

人気の理由の一つは日本人の「初物好き」にあります。農耕を起源とする日本人の食生活は、収穫の初物=縁起物という文化が根強くあり、ぶどうの収穫に関しても受け入れやすかったのでしょう。新米、新茶、初鰹、初詣、初日の出・・思えばいくらでもありますね。日本人が持つ価値感に上手く浸透したのだと思います。それに加え「解禁!」という言葉が加わればなおさらです。

恥ずかしいキャッチコピー

2000年代になると、日本においてボジョレーヌーヴォーのプロモーションが激化していきます。11月の解禁日が近くなると、テレビのニュースやネットで「今年のボジョレーヌーヴォーは10年に一度の最高な出来」などと話題になって行きました。そのキャッチコピーがエスカレートしていき「50年に一度」「今世紀最高!100年に一度」・・・。これはフランスの卸業者や日本の輸入業者が発信していたものですが、ボジョレーワイン委員会が発表した評価に基づいており、まんざら嘘ではありません。しかし委員会が「50年、100年」などと言うはずもなく、明らかにデフォルメした過激に造られたコメントだったわけです。

流通業者は

輸入業者、問屋、酒屋はそのキャッチコピーを武器に予約販売を推進したり、店頭での販売に力を入れます。普段ワインを飲まない方にも「年に一度、新酒のワインはどうですか?」とワインの消費拡大の絶好のアイテムだったのです。品質と価格は二の次になっていたのかも知れません。最悪だったのが、2012年に登場したペットボトル入りのヌーヴォーです。大手ディスカウントチェーンが、1本700円代というびっくりする価格で販売をしてた記憶があります。慌てて買いに行って飲んで見たら案の定、ボジョレーヌーヴォーとは言いがたいシャバシャバとした水っぽいワインです。これでは日本中にヌーヴォーは「美味しくないよ~」と宣伝したようなものです。せっかく何年もかけて築いてきたボジョレーヌーヴォーのマーケットに冷や水を浴びせたようなものでした。もちろん全てのペットボトルが悪いわけではありませんし、今でも大手メーカーさんはペットボトルを使っています。

現在のボジョレーヌーヴォーは

日本でのワイン消費の高まりにつれて(過去30年で4倍近く伸びた)ヌーヴォーの輸入は減っていきます。ワインに親しむ機会が増え、それ程初物に興味も無くなったのかも知れません。航空便で輸入される為、価格が高いのもネックになっているのでしょう。過去最高の100万ケースに輸入量は、40万ケースまで落ち込んでいます。とはいっても今でも日本は輸出先ナンバーワンです。キャッチコピーのネタは、さすがに酷いと思ったのか輸入元もあまり大げさにせず、ほとんど鳴りを潜めています。

ボジョレーヌーヴォーはずばり「買い」か?

結論からいうと「買い!」であり、おすすめしたいワインです。そのポイントは以下。

  • しっかりとした味わいに変化しており、価格とのバランスが合って来ている。
  • ヌーヴォーの優しい香りとフレッシュな果実味は唯一無二。他では味わえない。

ここ5年で味わいはかなり変化をしています。私が仕事柄30年に渡り数種類のヌーヴォーを試飲して感じた事は、近年のヌーヴォーのしっかりとした果実味と香りの進化です。この要因の一つが、温暖化により完熟度が早まっている事です。ボジョレーは言わば予約受注生産(酒販店は8月に発注の予約を輸入元に入れる)である為、予約が多ければ収穫も急がなくてはらず、完熟度や収穫に影響するのは容易に想像が付きます。もう一つがマセラシオンカルボニックの技術がアップしており、今まで以上に果実味や香りのバランスが良いワインが造れるようになったことです。

また味わいが安定したことにより、ボジョレーヌーヴォーとしての地位や、ブランディングがやっと確立した事です。日本での狂騒が落ち着き、無くなってしまうオワコンでは無かったのです。ワインラバーにとって亜流と揶揄されていた過去のシャバシャバのヌーヴォーも進化を果たしており、その特別なフレッシュ感は、やはり他のワインでは代替出来ないものなのです。「今年はとても美味しかった!」「いつもはワインを飲まないけど美味しいね」と言って下さるお客様が近年増えて来ているのを実感します。つまり日本人の味覚には、その優しい味わいがマッチするのが今でもに人気の要因なのです。

ボジョレーヌーヴォーはいつまで飲める?

ボジョレーヌーヴォーはその特殊な造り方から、早めに飲むことをおすすめします。フレッシュな旬の味わいが最大の魅力と言えます。毎年11月の解禁ですので、出来れば年内に飲まれるのをおすすめします。つまり基本的には、寝かせて美味しくなるものではありません。長くても次の年の暖かくなる前、ゴールデンウイーク前でしょうか。夏を越さない方が無難です。夏を超えてしまうと、やはりせっかくの新鮮な味わいが残念ながら消えてしまいます。

しかし実験的に、1年寝かせたボジョレーヌーヴォーを飲んだ事がありますが、何ととても美味しく熟成されていたという経験もあります。タンニンがしっかりしていたのでしょう。セラーで寝かせておいたものなので、ヌーヴォーの全てとは言えません。

おすすめのボジョレーヌーヴォーとヴィラージュヌーヴォー

ヌーヴォーは事前に試飲することが出来ないため、おすすめ出来るものは私が過去に飲んだ事のある信頼のおけるブランドの中から選んでみました。どれも今まで販売をしていて評判の良かったワインです!予約の際の参考にして下さいね。

ジャンドロレール ボジョレーヌーヴォー

ジャンドロレール ヌーヴォー
ジャンドロレール ヌーヴォー

ジャンドロレールは19世紀に設立されたボジョレーのネゴシアンで、ヌーヴォーの栽培者の70%と契約をし、厳選されたぶどうを確保出来安定した品質を保つことが出来るメーカーです。品質に絶対の自信を持ち、長年日本のファンを楽しませてくれています。価格も抑えてくれたおすすめ品です。

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ジョルジュデュブッフ ボジョレーヌーヴォー

ジョルジュデュブッフ ヌーヴォー
ジョルジュデュブッフ ヌーヴォー

日本で一番有名なヌーヴォーではないでしょうか。何故か毎年空港でJALのフライトアテンダントさんがにっこり笑ってワインを持っているテレビのニュースは、このワインです。サントリーさんが一押ししているデュブッフは一度は見たことがある花柄のヌーヴォー。

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プラトーデピエール ボジョレーヴィラージュヌーヴォー

プラトーデピエールボジョレーヴィラージュ
プラトーデピエール ボジョレーヴィラージュ

毎年一番人気なのがこのヌーヴォーです。ワンランク上のボジョレーヴィラージュになります。樹齢50年のぶどうを手摘みし丁寧に造り上げるメーカーで、やはり古樹から取れるぶどうの凝縮感が非常に高く、新鮮なフルーティな味わいは抜群です。当社でのリピート率が一番のワインです。今年は派手な赤ラベルからシックな大人の雰囲気のラベルに変更。

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オートモリエール ボジョレーヴィラージュヌーヴォー

オートモリエールボジョレーヴィラージュ
オートモリエール ボジョレーヴィラージュ

ワインの漫画の「神の雫 最終章」で取り上げられ話題となったヴィラージュヌーヴォー。ヌーヴォーのコンクールでは3年連続の金賞を受賞してる安定した味わいで人気があります。豊かな果実味としなやかな口当たりで固定のファンが多いヌーヴォーです。

タイユイヴァンVV ボジョレーヴィラージュヌーヴォー

タイユイヴァンVV
タイユヴァンVV ヴィラージュヌーヴォー

フランスの名門レストラン「タイユヴァン」が監修して造るヴィラージュヌーヴォー。VVとはヴィエユヴィーニュの略で樹齢35年から80年の古い樹のぶどうを使って造ります。輸入元のエノテカさんで一番売れているヌーヴォー。フレッシュさの中にコクを感じる上質な味わい。

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テールセクレットマコンヴィラージュヌーヴォー白

テールセクレット白
テールセクレットマコンヴイラージュ

マコンで非常に評価が高く世界的にも人気のあるテールセクレットの白のヌーヴォーです。シャルドネのフレッシュさと果実味を最大限に引き出すために通常のマコンよりも低温で発酵させます。爽やかな柑橘系果実を想わせるフレッシュな味わいは絶品です。通常のテールセクレットとヌーヴォーのテールセクレットがあるので注意してくださいね。

ドメーヌリュエ ボジョレー ロゼヌーヴォー

リュエロゼヌーヴォー
リュエロゼヌーヴォー

ドメーヌリュエはクリュボジョレーを中心としたワイン造りで定評のある生産者で、クリュボジョレーのレニエ村で使われてるぶどうをふんだんに使った珍しいロゼの限定ヌーヴォーです。美しい淡いピンクで軽快で爽やかな味わいは是非試したくなる逸品です。

ドメーヌ リュエ / ボージョレー ロゼ ヌーヴォー [2021] ロゼワイン 辛口 750ml / フランス ブルゴーニュ AOCボジョレー ボジョレー ヌーボー 新酒 2021年11月18日解禁(11月17日一斉出荷) Domaine Ruet Beaujolais Rose Nouveau

おわりに

正直10年前だったら、私もボジョレーヌーヴォーはおすすめしていませんでした。前述のように価格と品質のバランスが悪すぎていましたから。価格がこなれて来て、真面目な生産者の安定した品質のワインが多くなったのは、やはり需給のバランスが整った為でしょう。その製法から長期間保存するワインではないだけに、儚い花のような愛しさも感じるワインです・・でもやっぱり、初物や限定の言葉には惹かれるなあ!